こんにちは!
金沢でも桜が咲き誇っており、お花見には絶好の日和となりました。
というワケで、見事な金沢市内のサクラを紹介しつつ、お目出度いサクラとは真逆、どんよりホロコーストな映画、『サウルの息子』も観てきましたので感想などを。
舞台は第2次大戦時下のポーランド、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所。
この施設はユダヤ人を効率的に虐殺するための「絶滅収容所」で、処理すべき大量のユダヤ人をガス室にスムーズに導くため、同じユダヤ人の囚人を「ゾンダーコマンド」という特殊部隊に任じて、死体の処理や雑役にあたらせました。
「ゾンダーコマンド」(Sonderkommando)とは、延命される代わりに囚人の死への導き、死体の片付けと掃除、死体を焼却した灰の片付け、その他雑務をこなしながらも、決して命を補償されるわけではなく、いずれ殺される運命にある囚人たち。
そんなゾンダーコマンドのひとりサウルは、ある日ガス室で殺されたユダヤ人の中に、運よく死ななかった少年を見つける。ひとり生き残った少年はしかし、間もなくナチスの軍医に息の根を止められ、解剖されることに。
なんとか少年の死体を手に入れたサウルは、ユダヤ教の司祭であるラビを探し出し、ユダヤ教の教義に従って死体を埋葬することだけに執念を燃やす。
本作は、1944年10月7日に実際に発生した、アウシュビッツでのゾンダーコマンドの蜂起事件までの何日かを描いた作品です。
ユダヤ教では死者の復活を教義としているため土葬が一般的であり、火葬は禁忌になるそうです。なのでサウルは、時として他のゾンダーコマンドを危険にさらすこともいとわず少年の死体の保護とラビ探しに粘着するのですが、正直その行動には、古から「和をもって尊しと為す」を美徳として生活し、社畜体質が染み付いた典型的日本人である自分にとっては、かなりイラッとさせられました。
しかもサウルは、近く決行される予定のゾンダーコマンドの反乱計画の一員でもあるため、余計にナチスに怪しまれるような軽率な行動は控えるべきなのに、むしろ「怪しんでくだされ!」と思わせるほど無謀な行動を続けます。
映画を観終わるまで、主人公であるサウルにまったく共感できませんでした。
しかしその後ネットで調べたのですが、そもそもサウルが執着した少年は、本当にサウルの実の息子かどうかも不明で、作品中でも曖昧にぼかしています。
サウルは、どうせいつ殺されるかわからない状況下で、虫けらのように殺された少年をせめて人間らしく葬ってあげることが今まで大量に殺してきた同胞への鎮魂になり、ナチスに対するせめてもの抗議であったのかもしれない、という解釈もあり、なるほどなぁと思った次第です。
★★★★★
映画鑑賞中、隣の席の妻が、風邪も引いてないのになぜか咳き込んだり、なんとなくソワソワ動いている気配がしたので不審に思っていたのですが、鑑賞後に理由を聞いたら、どうも映画酔いをして気分が悪くなったとのこと。結局、作品も半分以上は観れなかったとか。
「子供か!」と思わず突っ込んでしまいましたが・・・
この作品、主人公のサウルのみにフォーカスし、周囲の背景をボカすような撮影方法をとっているのですが、そのためドキュメンタリータッチになり、かつ主人公の周囲で行われている虐殺シーンや死体などもボカされ、余計に不安感を煽るような効果になっています。
カメラも移動が多く揺れが激しい映像になっているため、その手の映像が苦手な方は要注意でございます。
それではー
【映画パンフレット】 サウルの息子 監督 ネメシュ・ラースロー キャスト ルーリグ・ゲーザ、モルナール・レヴェンテ、ユルス・レチン 第68回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞
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