分類王で「日本キャンディーズ協会」代表でもある著述家のケンゴ・イシグロ(石黒謙吾氏)なら知っていたが、恥ずかしながら、ノーベル文学賞を受賞した英国作家のカズオ・イシグロについては今まで全然知らなかった。
ということで「ノーベル賞まで取ったんだったら、いっちょ読んでみっかい」ってなって、『わたしを離さないで』(原題:Never Let Me Go)を読んでみた。
数冊出版されているカズオ・イシグロ作品からまず本書を選んだのは、タイトルに惹かれたから。なんか日本語にすると、すごく切ない響きを持つ言葉。
舞台は1990年代末のイギリス。
「介護人」という仕事をしているキャシーという20代後半の女性が主人公。
「介護人」というからには、老人や障碍者などの介護を主にする医療施設の看護師なんだろうか。
物語は、彼女が一人称で語る、「ヘールシャム」という施設で少女時代を過ごした過去を回想するシーンから始まる。幼いころから特に親しかった、癇癪もちだが優しい少年トミーと、親友で少しこまっしゃくれた少女ルースとの交流が語られる。
語り口調が穏やかでどこか上品であるのと、友人たちとの交流が、一般的な思春期の少年少女の心理や行動に基づかれたきめ細かい描写で表現されているため、「ヘールシャム」というのは、イギリスに実在する全寮制の名門校のことだと思ってしまった。
また、タイトルになった物語に出てくる「Never Let Me Go」という楽曲。
この曲を演奏する「Judy Bridgewater」なるアーティストも、イギリスに実在する古いミュージシャンだと思っていた。だから曲名は知らないけれど聴いてみたら「あー、この曲か」とわかるような往年の名曲かと思い込んでいた。
なので物語中盤まで、「ヘールシャム」時代の友人たちとの交流が、特に大きなエピソードや抑揚もなくゆっくり描かれているため、描写が丁寧で素敵だな、と思いつつも正直、退屈で読むのを止めようかと思ったのも事実。
ただ、徐々にこの物語の特異な設定が明らかにされていき、中盤以降で明かされる本来の設定を知ったときは「えーー!この小説ってこんな話だったのか!」と驚くやらズッコケるやら。
中盤以降は、一気に読み切ってしまった。
ただし設定は非常に特異だけど、ストーリー自体は至って普通で真っ当。起こるべき事が起こり、至るべき結果に至る。決して奇跡は起きない。タイトル通り、切ないストーリー。
・・それにしても不思議な小説だった。
今まであまり読んだことがないというか、淡々と抑揚なくなんでもないような物語を描きながらも、しかし意表を突いた設定という。
他のカズオ・イシグロ作品も是非読んでみたいと思った。次はどれを読もうかな。
なお全然知らなかったけど、イギリスでは映画化までされていて、なんとアンドリュー・ガーフィールドやキーラ・ナイトレイというビッグネームが出演していたという。
しかも昨年は日本でも、綾瀬はるか主演でドラマ化もされていたそうだ。日本のドラマはともかく、映画は観てみたい。映像化しても物凄く地味な映画にしかならない気もするが、いったいどんな作品に仕上がっているのか気になるところ。
最後に。
そういえば、最近新作が盛り上がっているブレードランナーに少しだけ似たテーマだってことに気付いた。
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