鬼才ジョン・カーペンター監督の『ゼイリブ』。
1988年初公開の作品で、今年は公開30周年にもなるという。
そしてそれを記念し、HDリマスターで再編集してリバイバル上映されたのが今回のイベントらしい。しかもこの再編集にはかなりお金をかけたそうで、その費用の一部をクラウドファンディングで賄ったそうだ。
本作、カルトSF映画の隠れた名作と言われてるけど、当時観たときは、正直そこまで面白い作品とは思えなかった。でも今回久しぶりに鑑賞したら、なるほど、未だに根強いファンも多いのもうなづける、それなりに魅力的な作品なんだな、と再認識した。
『ゼイリブ』は1度だけレンタルビデオ(もちろんVHS)で観た程度で、しかもかなりの大昔なので内容の記憶が殆ど無いんだけど、やっぱりこのエイリアンのビジュアルだけは忘れられない。
少数の富裕層と大多数の貧困層との富の格差が極端に拡大したロサンゼルスが舞台。
職を求めてふらりとやって来た、しがない肉体労働者のネイダ(ロディ・パイパー)は、ひょんなことから、人知れず人類の生活に侵入しているエイリアンの本来の姿を暴くことのできるサングラスを手にしたことから物語が始まる。
エイリアンは知らぬ間に政治や経済の中枢を支配し、人類をサブリミナルで洗脳し奴隷として支配し、地球を乗っ取ろうと画策するが、その企みに気付いた少数の人間も存在し、ネイダも彼らと共にレジスタンス活動に身を投じることになる。果たして人類はエイリアンに勝てるのか!?
後半になるにつれ脚本も雑になり、突込みどころも多くなり、いかにも80年代のC級映画っぽくなるのだが、そんなしょっぱさも愛嬌に変えるほど、本作の風刺の利いたストーリー、魅力的なキャラクターがとても良い。特に有名な、ネイダと、肉体労働者仲間のフランク(キース・デヴィッド)との喧嘩シーンは秀逸で、劇場でも大ウケだった。
ネイダ:「なぁなぁ、このサングラスをかけてみて。信じられへんやろけどな、世の中にはエイリアンがうようよおるねん!」
フランク:「いやいや(苦笑)、ええわ。妻も子供もおるし。 じゃ帰るわ」
ネイダ:「いや、ちゃうねん!ホンマにちゃうねん!ヤバイねん! ・・・まずはこのサングラスをかけてくれって!」
フランク:「いやいや(困惑)、マジでええから。間に合ってるから。 ほな!」
ネイダ:「おい待てやボケ! サ・ン・グ・ラ・ス、かけろっちゅーねん! おんねん! エイリアンがギョーサンおんねん!」
フランク:「いやいや(怒り)! ええ加減にせいや! ワシはそんなもん一切興味ないねん!」
フランクにしてみたら、学会員に折伏されそうになるか、もしくはディストリビューターからディッシュ・ドロップの実演販売を無理やり見せられるような状況なので、拳にものを言わせても拒否るしかないだろう。ここから、豪快なプロレス技も交えた男同士の熱いストリートファイトが延々続くという名シーンだ!
しかし、サングラスをかけろ!かけない!の言い争いから、なんでここまでの大乱闘になるのかも意味不明だが、そもそもなぜ一般人がラリアットやバックドロップ、ジャーマンやブレーンバスターをかませるのか当時はわからなかった。実は、主演のロディ・パイパーが高名なプロレスラーであったからなんだろうけど、つか、そもそも主演俳優がプロレスラーだったってのも、今回初めて知った。
そしてなにより今回のHDリマスターの再編集版、お金をかけた甲斐があって、すごく映像がキレイで、とても80年代の映像とは思えないほど違和感なく作品に没頭できた。
ラストシーンは、またまたオレの好きな『ハウリング』のラストシーンみたいで良かった。しかし80年代のSF映画って、雑ながらも味のある作品が多くていいなー。