okurejeの日記

フィギュアや映画や本などについて、ゆるく書かせていただきます。

『ハード・コア』 感想 #ハード・コア #いましろたかし #山下敦弘

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昨日観たのだが、今更ながらじわじわときている。
本作、今年観た新作映画では、とりあえず暫定1位かも。

 

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いましろたかし先生の作品で一番好きなのは『釣れんボーイ』だ。
狩撫麻礼氏の原作モノでは『タコポン』が好きなのだが、『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』も確かに名作である。

 

・・・が、しかし。

いくら名作と言えども、この作品を映画化するなんて、正気を疑わざるを得ない。
というか、いましろ先生の作品は過去に『デメキング』が2度も映画化されたが、基本的には映画化には向かないだろう。要するに、万人受けする作品ではないからだ。

 

『ハード・コア』も、実写化したビジュアルは、多少絵的には面白いかもしれないが、基本的にストーリーは地味で飄々として、やるせなくて、そして暗い。
いくら山田孝之や荒川良々、佐藤健が好演しようが、どうしたって面白い作品になる予感は限りなくゼロだ。興行収入も望めないだろう。
また、山田孝之が以前に山下敦弘監督とタッグを組んだドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』だが、自分的にはあまり乗れなかったので、本作もそれほど期待できなかった。
それでも、こんな原作を映画化したその心意気に打たれ、劇場に訪れた。

 

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冒頭。
カラオケスナックで一人静かに飲んでいた主人公の権藤右近(山田孝之)が、途中からやってきたチャラい若者たちのハシャギぶりにブチ切れるイントロダクション。

原作では、最初は一人で飲んでいた女性が、最終的には若者たちといっしょに盛り上がり、彼らの一人とノリで「チュッ」とキスをするシーンがあるのだが、映画でもその「チュッ」を忠実に再現しており、まずはソレに驚いてしまった。

 

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しかもその女性客を演ずる松たか子(いきなりチョイ役に大物かよ!)、最初は落ち着いた大人の雰囲気だったのが、結局はチャラい若者たちと意気投合するというギャップが、右近がブチ切れる理由を際立たせており、この映画独自の演出に、つかみから持って行かれたのは言うまでもない。

 

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そして山田孝之は、見事に権藤右近だった。
そもそもクセの強い人物を多く演じてきた、若手俳優のなかでも独特の存在だけど、さすがにこの役、彼ではイイ男過ぎて無理があるのでは?と思っていた。
しかしスクリーンには、屈折して鬱屈した、それでいて何の役にも立たずどうしようもない男、近藤右近の実写版がそこにいた。
つか、原作にはないテレフォン・セックスのシーンには驚愕しかなかった。

 

荒川良々の好演は言うまでもない。
そもそも見た目からして牛山に近いけど、こんな痴呆みたいな男の役を、これだけリアリティ溢れる人物として表現できる役者なんているんだろうか。
もう、さすが!としか言いようがない。

 

驚いたのは佐藤健で、観る前からなんとなく近藤左近に似てるなとは思ってたんだけど、中身まであれだけ似せてくるとは思いもよらず、しかも、なぜ本作が「R15+」なのか観るまではイマイチわからなかったんだけど、原作にはない左近のあの生々しいシーンもレイティングを上げる一要因になったんだと思う。
それにしてもよく、ちょっと汚れ役でもあるこんな仕事を引き受けてくれたな・・
佐藤健には感謝しかない。

 

また特に印象に残ったは、怪しい右翼団体の幹部構成員・水沼を演じた康(かん)すおん。ビジュアルこそ水沼に似せていないが、水沼の、開けっ広げなのか腹黒いのか判別し難いガハハオヤジ感がすごくよく出ていて、いい役者使うなーと感心してしまった。

 

しかし、まんま原作から抜け出てきたような金城銀次郎会頭を演じた、首くくり栲象(たくぞう)っていったい誰だ?めっちゃいい味だしてたけど・・と思ったら、

えーーーっ!
首吊りパフォーマンスで有名なあの人やないですかっ!
ある意味、いましろ先生の作品に出てくるキャラクターのような生き様をリアルでされているような人。
今年3月に亡くなったと聞いてたけど、亡くなる前にリアルな金城会頭をスクリーンに蘇らせてもらえるとは・・、
本当に奇跡の1本って感じの映画かよ!

 

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なお、本編終了後の、原作にはない独自の追加シーン。
自分的には不要なシーンだとは思うが、パンフレットに書かれていた、山下監督と脚本の向井康介氏の思いを読んだら、それはそれで気持ちは分かると思った。(いらないと思うけど)

・・ということで、思った以上にちゃんとした「いましろ」作品で、今年観た邦画作品のなかでは『恋は雨上がりのように』と同様、印象に残る良作だった。

 


映画『ハード・コア』11/23公開 予告編

 

ただ、大いに人を選ぶ作品。

少なくとも原作ファンであることは前提だろう。
(いましろ作品なんて全く読んだこともない妻が、意外と楽しめたと言っていたが、これは稀な例だと思われる)

原作未読で、ただただ健クンのファンというだけで観に行く予定の女子は、注意が必要だ。

 

ああそういえば。パンフレットに掲載されていた、いましろ先生のインタビューだが、このコメントが笑えた。

 

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ハード・コア 平成地獄ブラザーズ 1 (ビームコミックス)

ハード・コア 平成地獄ブラザーズ 1 (ビームコミックス)

 
ハード・コア 平成地獄ブラザーズ 2 (ビームコミックス)

ハード・コア 平成地獄ブラザーズ 2 (ビームコミックス)

 
ハード・コア 平成地獄ブラザーズ 3 (ビームコミックス)

ハード・コア 平成地獄ブラザーズ 3 (ビームコミックス)

 
ハード・コア 平成地獄ブラザーズ 4 (ビームコミックス)

ハード・コア 平成地獄ブラザーズ 4 (ビームコミックス)

 

 

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