okurejeの日記

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『アスペル・カノジョ』があまりに衝撃的だった

kindlで1巻が無料だったので読んでみた『アスペル・カノジョ』。

 

アスペル・カノジョ(1) (コミックDAYSコミックス)

アスペル・カノジョ(1) (コミックDAYSコミックス)

 

 

思わぬ衝撃的な作品だったため、すぐに既刊(4巻まで)を全て購入、一気読みしてしまった。

 

朝刊配達のアルバイトをしながら風呂無し共同トイレの安アパートに暮らす、売れない同人マンガ家である横井拓のもとに、ある日、ファンを名乗る1人の少女が不意に訪れる。

 

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自宅の住所など公表しているワケもないのになぜ住まいが知れたのか?
しかも、なぜ女性がたった一人で訪ねてきたのか?
・・疑問に思いつつも、おそらく日本に数名しかいない、いやたった一人かもしれない女性ファンであるということに気を許してしまい、つい彼女、18歳の斉藤恵を自宅に招き入れたのだが、コートを脱いだ彼女の手首には無数のリストカットの跡が・・

 

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自宅の鳥取県から東京まで深夜バスでやってきたという彼女、「斉藤さん」は、横井の自宅に上がったままずっと帰ろうとせず、しかも家に帰りたくないと言う。あまりの展開に戸惑う横井だったが、事情がありそうな斉藤さんを無理に追い出すことが出来ず、仕方なく彼女を泊めてあげるが、横井が朝目を覚ますと、なんと斉藤さんは布団の中で手首から血を流していた!・・・

 

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普通は、自分の家の布団でリストカットされたら、驚愕のあまりすぐに追い出してしまうだろうし、自分だったら絶対にこんなややこしい女性は無理なのだが、横井は、そんな斉藤さんの行為に驚きながらも、彼女を放っておけなくなる。

彼女の方も、こんな社会不適合者である自分を拒否することなく冷静に応対してくれる横井にますます惹かれてしまい、実家に帰ることなく、斉藤といっしょに暮らすことになる。

 

障碍者手帳も持っている斉藤さんほどではないが、自分自身も他者と容易に打ち解けられない性格で、彼女と同様に生きづらさを抱えている横井は、彼女がいかに世間と相いれない性格で、そして生きることに全くこだわっていないほど危険な状態であることを感覚的に理解しているため、彼女の数々の異常行動に戸惑い驚愕しながらも、一切突き放すことをせず、彼女に心から寄り添っていく。

 

というか、斉藤さんに度々訪れる、過去のトラウマなどがフラッシュバックして過呼吸状態になり、意識が遠のいてヘタをすればそのまま死に至ってしまう症状が突然起こってしまうが、横井はその度に必死で彼女を救うために看病したり奔走したりする。

 

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ここがこのマンガの凄いところで、このようなパニック症状の際や、その他の斉藤さんの数々の奇行、例えば他人に対して平気でキツイことを言ったり、いきなり犬を蹴飛ばしたり子供を転ばせたり、突発的にモノを破壊したり、果ては自傷したりした場合も、なぜ彼女がそのような行動を起こすのか理由をとっさに思考するシーンの、その短いモノローグのおかげで、読者にも凄くわかりやすく発達障害の人の奇行のメカニズムが理解できる。(もちろん精神医学的に正しい説なのか不明だが)

 

自分自身が、いわゆるウツ状態などにもなったことがないため、リストカットしたり自殺したいと思う気持ちがよく理解できなかったのだけど、この作品を読んで、なるほどこういった心持ちでリストカットしたり自死したりするんだな・・ということが初めて少し理解できた気がした。

例えば発達障害関係の漫画作品としては、『透明なゆりかご』で有名な沖田×華さんの作品群があげられる。
沖田さんはアスペルガー症候群であることを公表しており、過去に自殺未遂も図ったそうだが、彼女の作品を読んでも、なるほど、発達障害の人ってこういう行動を取るんだ、というのはわかるんだけど、実際にどういった理由でどんなシステムで追い詰められて自死まで至ってしまうのか、ということはわからない。
経験者が自身を語るより、『アスペル・カノジョ』のように、他者が第三者の視点で発達障害を語るほうが理解がしやすい、という点もあると思う。

 

なお本作では、横井のセリフに名言が多いのもポイント。
自分の気持ちを言葉にうまく言い表せずに誤解されたり孤立していく斉藤さんに対して、「言葉なんてしょせん、頭で考えていることの劣化コピーに過ぎないので、うまく気持ちを表現できなくて当然」と彼女を慰めるシーンがあるのだが、「言葉は思考の劣化コピーに過ぎない」って、いい表現だよね・・

 

図らずも同棲生活を送ることになった横井と斉藤さんだが、しかし二人はお互いの事を本当に大切に思っているし愛し合っているにも関わらず、まだ肉体関係を結んでいない。
自分をここまで守ってくれる横井に対して、斉藤さんは申し訳なさのあまり、セックスしてもいいと申し出るが、ただし条件として「自分と同じような不幸な子供が生まれるのは絶対いやなので、子供は絶対に産まない。もし妊娠したらお腹を蹴って赤ちゃんを殺してください」と懇願する。
この言葉を聞いて、「斉藤さんが本心から生きていたい、と思うようになるまでセックスは保留しよう」と優しく彼女に誓う。
めちゃくちゃ純愛。もう涙しかないでしょ。

 

ちなみに本書のAmazonレビューで、「斉藤さんはアスペルガー症候群ではなく境界例(境界性パーソナリティ障害)だ!読者が誤解する!」と非難しているレビュアーがいて、その人の他の本のレビューを読んだら、殆どの本に同じような文句を付けていたので笑ってしまったが、メンタルヘルス系の病気って確かに色んな種類があって、それぞれどんなものなのか、自分のような素人にはさっぱりわからない。


アスペルガー症候群は、発達障害の中の自閉症スペクトラムの中に分類されるそうで、ADHDは発達障害に分類されるそう。
一方の境界例(境界性パーソナリティ障害)は精神障害に分類されるそうで、似て非なる障害だそうだ。大きな違いとしては、発達障害は先天的な脳機能障害で、境界例は後天的な精神障害で、幼少時の家庭環境が原因とされることが多く、確かに斉藤さんも父親からの虐待が大きなトラウマになっているので境界例のようでもあるけど、最近は境界例も先天的な可能性があるらしいので、一概に境界性である、とは言えないような。
いずれにせよ、本書を読むことで、改めてメンタルヘルスの病気について学ぶきっかけになるかもしれない。

 

Webマンガということもあるのか、作画としてはそれほど描き込まれておらず、ストーリーもちょっと出来すぎなところもあるけど、久しぶりに衝撃的な作品だったので、これからの展開が楽しみ。
ただ願わくば、本作のモチーフになったような「ねこぢるうどん」の作者、ねこぢるさんのような結末にだけはなって欲しくないと切に願う・・

 

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