okurejeの日記

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星野陽平『増補新版 芸能人はなぜ干されるのか?』

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『芸能人はなぜ干されるのか?』
あまりにも直球でひねりもないタイトルから、どうせネットで散見できる通り一遍のゴシップ記事だけの本だろうと高を括っていたが、AmazonのPrime Readingで電子書籍版が無料だったので読んでみたら、これが驚いた。

芸能プロダクションと芸能人の関係を戦前まで遡ってその歴史を辿り、世界的にも特異な日本の芸能界の実態を丁寧に記述した真面目な著作で、かつ芸能プロダクションとヤクザとの関係性も記載した衝撃的な内容でもあった。

特に、芸能界のドンとして知られる悪名高い周防社長のバーニングプロダクションや、同じく悪名高いパールダッシュの谷口社長などについては、「え!ここまで書いて委員会?」くらい裏社会との関係性を淡々と記しているが、まるでマンガみたいなエピソードが逆に信ぴょう性を増している。

 

そもそも芸能ネタ専門のライターではなかった著者が、とある取材で日本の芸能人がプロダクションからあまりに搾取されている実態を知ったのが本書を書くきっかけだったそうで、旧態依然とした日本の芸能ビジネスの構造を可視化し、かつ未だに扱いの低い日本の芸能人の地位向上を願って本書を著したと思われる。

ショービジネスといえばアメリカ(北米)だが、アメリカでもかつてはタレントの扱いは低かったが、苦労して労働組合を作り、現在ではタレントとエージェントの関係は対等、いやむしろ、タレントの方が強いそうだ。ただしハリウッドなどではハーヴェイ・ワインスタインのような悪徳プロデューサーが権力を握っていたり、労働組合自体が権力を持ち始めたりと、必ずしもタレントの権利が全てに優先されているわけでもないらしいが、少なくとも日本(と、日本の芸能プロダクションを習った韓国)ほどタレントの扱いが未だに奴隷並みの国はないということだ。

 

なお現在、日本中を騒がしている宮迫博之の闇営業問題から端を発した吉本興業騒動だが、本書でも吉本興業については当然ながら章を割いている。
「ファミリー」といいながら、会社側は芸人をとことん商品として扱い、人気が出て独立しようとしたら徹底的に潰しにかかる。芸人は絶対に図に乗らせない。
まさに今回の大騒動がいずれ発生するであろうと予想されるような、多くの吉本芸人の反乱と鎮圧の歴史が記されている。

ただ本書では、吉本興業で「笑い」にこだわったのは創業者の吉本吉兵衛のみで、妻で朝ドラ「わろてんか」の主人公にもなった吉本せい、せいの弟の林正之助から以降の経営者は儲けが第一で、芸人にこだわりがなかった、と書かれているが、そこだけは少し違うような気はする。

そもそも昔の浪花の商人はどケチがDNAに染みついており、使用人を大事に扱わないのはデフォだった。吉本せいは落語家を大事にしたようだし、林正之助もいわゆる「しゃべくり漫才」の原型を作ったほど「大衆に受ける笑い」をプロデュースする才能に人一倍長けていた。
しかし当時(大正から昭和にかけて)の芸人は破天荒な人間も多く扱いが非常に難しかったため、マネジメントにはかなり苦労したと思われる。
林正之助は晩年まで、自社の社員を野良犬、所属芸人をゴキブリと呼んでいたそうだが、芸人を愛しながらも、吉本興業が軌道に乗るまではさんざんわがままな芸人達に苦労させられた教訓を社訓としたのではないだろうか。

 

また今回の吉本興業騒動では反社勢力との関係が問題になっているが、吉本創業時から、日本では興行界とヤクザとの付き合いは切っても切れない関係であり、戦後も林正之助と山口組三代目の田岡組長との蜜月ぶりは有名だった。

ちなみにネットで拾った、フジテレビのプロデューサーで吉本興業にも所属した、故・横澤彪氏が語ったという週刊誌の記事の抜粋だが・・・

 

トップの林(裕章元会長)さん自らズブズブだったものね。
下の者に示しがつかないですよ。でも、林さんは明らかに「喰い者にされたほう」だから。博才もないのにヤクザと賭け麻雀して借金の追い込みをかけられたり、女を世話してもらったらビデオに撮られて脅されたり。ずいぶんむしり取られたんですよ。そのトラブル処理にあたっていたのが中田カウスだったんだよね。
それもあって、カウスを特別顧問にしようと林さんが言いだした時、僕は反対した。あんな半分ヤクザみたいな者を顧問にしたらたいへんなことになると思って、最後まで承認の稟議書にハンコを押さなかったの。

 

・・・(記事の信ぴょう性は不明だが)つい最近(2004年頃)までの吉本興業のトップがこんな感じだったので、むしろ現在ヤリ玉に挙げられている大﨑洋会長は、なんとか吉本興業から反社勢力を排除しようとした功労者ではあると思うが、それにしても所属芸人へのパワハラや低賃金などの扱いは、さすがに現代では時代遅れだろう。

 

ということで本書、昭和から現代までにタレントが干されたケースが時系列に多く記された貴重な芸能史にもなり、無料で読むのは申し訳ないとの思いで、改めて紙の本で購入した次第だ。

 

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これは日本の悪徳芸能プロダクション一覧として、東京の危ない地域一覧である『首都圏住みたくない街』とともに、是非とも紙の本を購入し本棚に揃えておくべきだろう。

 

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ネット社会のため昔は隠蔽できた悪事が隠せなくなってきており、最近ではジャニーズ事務所の横暴ぶりや、今回の吉本興業の騒動など、だんだん芸能プロダクションの真実が一般にも知られるようになったが、それでもまだまだ日本の芸能人には自由がない。
いつかわが国でも芸能人の地位が向上したら、本書も『女工哀史』のように、過去の日本の芸能人受難の歴史を記録した資料になるかもしれないが、芸能プロダクションとテレビ局がベッタリ癒着している現在の状況で、果たしてそんな日がくるんだろうか?とどうしても思ってしまう。

 

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