okurejeの日記

フィギュアや映画や本などについて、ゆるく書かせていただきます。

藤井聡子×清田麻衣子「ケレン味と正直さの狭間で」 at 早春書店

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国分寺に今年3月にオープンしたばかりの古書店「早春書店」で開催された、藤井聡子さんと清田麻衣子さんのトークイベント「ケレン味と正直さの狭間で」。

富山県在住の人気ライター「ピストン藤井」こと藤井聡子さんが今年の10月に上梓された最新書籍『どこにでもあるどこかになる前に。〜富山見聞逡巡記〜』の出版記念イベントということで、著者の藤井聡子さんと、出版元である里山社の清田麻衣子さんをゲストに、早春書店のオーナー下田裕之(コメカ)さんが聞き手となって、出版までの経緯や執筆中の苦労話などのトークが展開された。

 

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本書『どこにでもあるどこかになる前に。〜富山見聞逡巡記〜』は、藤井聡子さんが大学卒業後、上京して雑誌編集者として活動後、30歳を手前に地元である富山県富山市にUターンするも、地方独特の閉鎖性、閉塞感に生き辛さを感じつつ、それでも個性的な人たちとの出会いから、ミニコミ誌の出版、イベント開催などユニークな活動を行うまでとなって、自分なりの地元との関わり方を見出していく現在までが綴られている。

 

里山社のホームページでWeb連載されていた頃に読んではいたのだが、こうやって1冊の書籍としてまとまった形で読んでみると、文章の巧さ、テンポの良さが相まって、想像以上に面白く読むことができた。
藤井さんが東京と地元・富山で文字通り「逡巡」するようすは、同じ地方出身者としてものすごく「わかりみ」があり、かつ感銘を受けた。
そしてこの本、装丁もとても素敵で、藤井さんの著作といったら『文芸逡巡 別冊 郷土愛バカ一代!』シリーズしか知らなかった身からすると、まさに信じられない「奇跡の一冊」のような気がしたのだが、今回のトークショーを拝見させて頂いて、本書が世に出れたのは、執筆された藤井さんの尽力はもちろんだが、版元である里山社の清田さんのお力が想像以上に大きかったことがよくわかった。

自分が一冊の単行本を世に出すなんて「烏滸がましい」と感じていた(・・出版された今でも同じ心持ちなのは藤井さんの表情を見ればわかる)藤井さんの背中を押して、叱咤激励を繰り返して出版までこぎつけ、出版後も様々なイベントを企画し、あまつさえアウェイである金沢や東京にまで藤井さんを引っ張って来てプロモーションに尽力されている清田さん・・
・・なんなら作者名を「清田麻衣子」にしてもいいくらいだ。

 

なおイベント名である「ケレン味と正直さの狭間で」は、早春書店オーナー下田さんがご自分で付けられたそうで、「ケレン味」とは、「ピストン藤井」という、性別も不明な風変りなペンネームと、工事用のヘルメットと作業服というユーモラスな衣装で個性的な活動を行ってきた藤井さんをあらわし、「正直さ」とは、素の藤井聡子をあらわしているそうで、まさに言い得て妙と感じた。
また下田さんが、今でも「逡巡」し続けている藤井さんが一番、藤井さんらしい、と仰っていた言葉が印象に残った。

 

それにしても下田さん、トークがとても知性的で司会も堂に入っていたので驚いてしまった。聞けば今回のイベントが、早春書店での第2回目のトークイベントになるということだったが、書店オープンから1年にも満たないのに様々なイベントを企画されており、これからも楽しみな古本屋さんだと思った。

 

ところで国分寺と言えば椎名誠『さらば国分寺書店のオババ』を思い出すが、聖地巡礼ではないが、かつて国分寺書店があった跡地に行ってみた。
・・というか、国分寺駅南口のすぐ前だったので驚いてしまった。

 

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国分寺は古書店の町として有名らしいが、実は国分寺に訪れたのは今回が初めてだったのだが、バスを利用すれば自宅から意外と近いことを発見できたので、今後も早春書店さんや、他の古書店にも訪れてみたい。

 

小規模ながら楽しくほのぼのとした雰囲気で、楽しいトークショーでした。

 

どこにでもあるどこかになる前に。〜富山見聞逡巡記〜

どこにでもあるどこかになる前に。〜富山見聞逡巡記〜

  • 作者:藤井 聡子
  • 出版社/メーカー: 里山社
  • 発売日: 2019/10/16
  • メディア: 単行本
 

 

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