まさか、本屋B&Bで藤井聡子さんのイベントを拝見できるとは思いもよらなかった。
藤井聡子×絲山秋子
「富山⇄東京 地方で生きる、地元で書く。」
『どこにでもあるどこかになる前に。〜富山見聞逡巡記〜』(里山社)刊行記念
前夜の早春書店さんのイベントに引き続いて、藤井聡子2DAYSのラストは、なんとあの、下北沢は本屋B&B。
しかもゲストに、人気作家の絲山秋子さんまでブッキングしてくるとは・・
藤井聡子さんとは編集プロダクション時代の同僚であり友人でもある、ひとり出版社「里山社」の清田麻衣子さんの辣腕ぶりがうかがえる・・
前夜と同様、最前列にストーカーのように陣取って開演前から注視していたが、出番前にトイレに入った藤井さんの形相が鬼のように緊張されていたので、こちらまで緊張してしまった。そりゃ、B&Bでこれだけの満員のお客さんと有名作家を前にしたら、どう考えてもガチガチになるわ・・・藤井さん可哀相・・・
しかしイベント開始後は、緊張しまくる藤井さんを察して「みなまで言うな」とばかりに、手慣れた余裕のトークで会場を沸かす絲山パイセンのお陰で、藤井さんもだんだんリラックスした雰囲気で発言することができて、本当に楽しいトークイベントになった。
世田谷生まれだが現在は群馬県に在住されている絲山さんだが、富山を舞台とした小説を執筆されているのと、富山の北日本新聞で紀行エッセイも書かれていたこともあって、地元の藤井さん以上に富山には詳しいほどで、他県在住者目線で語る富山論はとても興味深かった。
また藤井さんがかねがね、東京発の大型ショッピングモールやシネコンが地方に次々と進出して、地元の独自色が失われていくのを苦々しく思っていることに対して、絲山さんは、別に街の区割りや土地の高低が大きく変わるワケじゃなし、都会と同じようなハコものが地方都市に出来たとしてもあまり気にならない、街そのものは変わらない、と仰っていたのには、確かに目からウロコというか、仰る通りだな、と思った。
自分としても、地元の金沢に大型ショッピングモールが出来たら便利だと思うし、ネットで座席予約できて綺麗な施設で映画鑑賞できるシネコンはありがたみしか感じない。
もちろんミニシアターはいいのだが、シネモンドなどは未だにネット予約ができないのは本当に不便で、どうしても足が遠のいてしまう。
「昭和の時代は良かった」というが、ウォシュレットもなく、道路はおろか施設内や電車内でも喫煙者がいた昭和の時代に戻れるワケもなく、画一的とは言っても、都会と同じような施設が地方都市にもあるほうがありがたいのだ。
ただ、やはり地方に関しては地域住民の考え方が従来通りで、思考がアップデートされていかないのは間違いない。親類付合いなどのしがらみも多く、東京に住んでいると地方のある種の煩わしさを感じないのですむので、生きやすい。
なので、『どこにでもあるどこかになる前に。〜富山見聞逡巡記〜』で描かれる、地方の閉塞感に抗い、逡巡する藤井さんの姿には共感を覚える。
それにしても、前夜の早春書店でのイベントでも感じたのだが、B&Bのお客さんにしても、富山での「ピストン藤井」としての活動を昔から知っている人たちではなく、純粋に藤井さんの新著の内容に感銘して訪れたお客さんが少なからずいたことに、正直驚いてしまった。
イベントのラスト、お客さんからの質問コーナーで、おそらく新著で藤井さんのことを初めて知ったと思しき女性の方が、本書を読んで本当に感銘を受けたとコメントされているのを聞いて、藤井さん自身も泣きそうになっていたが、(藤井さんとは直接お話したこともないのに、すっかり保護者目線で)こちらまで思わず目頭が熱くなってしまった。それだけ、今回の著作には力があるんだな、と改めて実感した次第でもある。
そして今まではネット上でしかお話したことがなかったが、念願叶って、初めて藤井さんに面前でご挨拶できて感無量。
サインには、藤井さんの座右の銘であるという、丹下段平の名台詞を書いて頂いたのだが、『明日のジョー』ちゃんと読んでないので意味わからなくてすいません!
ということで、東京での藤井さんの2DAYS、どちらも素晴らしいイベントで、本当に楽しかった。そして藤井さん、大変なイベントをこなされて本当にお疲れさまでした。でも、次のコンテンツにも大いに期待しています!