okurejeの日記

フィギュアや映画や本などについて、ゆるく書かせていただきます。

『リチャード・ジュエル』 感想

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オリンピックに興味がないため、1996年にアメリカで開催されたアトランタ五輪が、(1896年にアテネで初開催された)近代オリンピック百周年にあたる記念すべき大会であり、しかもオリンピック公園の屋外コンサート会場で2名の死者をだした爆破事件があったなんてことも全く知らなかった。

 

本作『リチャード・ジュエル』は、当時のオリンピック公園の屋外コンサート会場で警備員だったリチャード・ジュエルが、爆発物の第一発見者かつ爆発被害を最小限に食い止めたヒーローであったにもかかわらず、FBIの誤認捜査とマスコミの過剰報道により凶悪な爆弾犯人として糾弾されるという、無実の人間が一転して社会から非難されてしまうフェイクニュースの実態を描いた作品であるが、そもそも爆破事件があったことすら知らなかったし、しかも本作の主人公であるリチャード・ジュエルを演じるポール・ウォルター・ハウザーが、主人公と呼ぶにはあまりにも華のないビジュアル!
今年で90歳にならんとするクリント・イーストウッド翁の監督作でなかったらおそらく観に行かなかっただろう、なんとも地味目な映画作品である。

 

・・しかし、このポール・ウォルター・ハウザーが、なんともいい味を出してた作品だった!

本作と同様、実話をベースに映画化された『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダ』では、ちょっと間の抜けた「ナンシー・ケリガン襲撃事件」の実行犯を演じ、同じく実話ベースの『ブラック・クランズマン』でも、KKK(クー・クラックス・クラン)のちょっと間抜けな構成員を演じていて、脇役でも悪目立ちしそうなほど「太っちょのマヌケかつ危ないヤツ」がよく似合う俳優さんだが、今回もイーストウッド監督からさらに体重増量を要求され、「より愚鈍そうに見える太った人」感を増して、演技に磨きをかけて主役を演じきった。

 

「太っててホワイトトラッシュっぽい母親と二人暮らしの銃マニア」な外見は、確かに誰かが「あいつは犯罪者かも?」と言ったら信じてしまいそうだけど、実は純粋で真面目で、何かに凝りやすい性格なだけの無害な人物で(てか実際のリチャード・ジュエルも、少し発達障害の気があったのかな?)、こんな複雑なキャラクターをポール・ウォルター・ハウザーは見事に表現していたし、監督も丁寧に描いている。

ジュエルの母親役のキャシー・ベイツもさすがの演技で、FIBが証拠物件として、自宅から単なる料理用のタッパーウェアまで押収したことに激怒するシーンと、息子の容疑が晴れて、後日返却されたタッパーウェアにマジックで勝手に書かれたナンバーを指でこするシーンがあるんだけど、無言で演じる表情から色んな感情が溢れており、さすが名優・・となった。もちろん、息子のために演説を行う場面ではやはり泣けてしまった。


あと、リチャード・ジュエルの唯一の味方であるワトソン・ブライアント弁護士を演じたサム・ロックウェルが非常に良かった。どちらかというと悪役の印象が強いので、今回も一見ひねくれてクセの強い印象だが、実は芯の通った有能で優しいキャラクターであり、依頼人としては頼りなくて危なっかしいジュエルを、しっかりとサポートしてかつ奮い立たせる有能な弁護士役がピッタリ合っていた。

 

ただ最終的に、リチャード・ジュエルを陥れたとも言えるFBI捜査官や、最初に糾弾記事を書いた地元紙の女性記者に対しては強烈なしっぺ返しがされなかったので、少しだけ欲求不満だったのと(基本的には事実を淡々と表現する演出っぽいのでしょうがないけど)、やはり日本では殆ど知られていない事件の物語であるため、どうしても地味な作品という印象は残ったし、題材もそれほどセンセーショナルでもなかったが、逆にこんな地味な題材でも、じっくり淡々と描いてうっすらと感動までさせるのはクリント・イーストウッドの手腕なんだろうな、と改めて感じた。ジワジワくるいい映画。

しかしやっぱ世の中は「人は見た目が9割」なんだな、というね・・

 

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