ジム・ジャームッシュ監督がゾンビ映画を撮ったなんて、一体どういうコトなんだろう。
初めてこのニュースを知ったときはとにかく戸惑ったが、とにもかくにも公開されたらスグにも観に行こう・・・と思っていたら新型コロナ禍で公開延期に・・
さすがに4月から5月までは大人しくステイホームしていたが、緊急事態宣言解除とともに満を持して公開の運びとなったため、早速、同じく2か月ぶりに乗る電車でTOHOシネマズに駆け付けた。(ただし歌舞伎町に立ち寄るのはまだ不安だったため、府中のTOHOシネマズに出向くことに)
久しぶりの劇場での映画鑑賞だが、土曜日とは言え映画館はさすがに人も少なく(府中ゆえか?)、座席もコロナ対策で1席分の間隔を空けているので、ゆったりと鑑賞することが出来た。劇場側としては収益が上がらず大変なので申し訳ないのだが・・
さて本作だけど、ゾンビ描写には新鮮味はないし、ストーリーもいつものごとくオフビートだし、メッセージ性はあるがそれほど深みが無いし、しかもまさかのメタフィクションありという・・
劇中にちりばめられたオタクっぽい過去映画ネタにしても、タランティーノがさんざんやった演出を焼き直しているようで、ハッキリ言って娯楽映画としては面白くはないし、もっと言うと全体的にフザけた映画である、と言える。
例えば作品中、初めてゾンビによる殺人が発生したダイナーの事件現場に順番に到着した主役の3人の警官、警察署長(ビル・マーレイ)、男性巡査(アダム・ドライバー)、女性巡査(クロエ・セヴィニー)が、到着した順に一人ずつ死体を確認するシーンがある。腸が食いちぎられた無残な2体の死体を確認、驚愕して「オェ!」っとなるシーンを、わざわざ3人分、全く同じシチュエーションで撮っている。
しかもその際に画面に映し出される2体の死体は全く同じアングル。
普通なら、3人同時に現場に入るか、もしくは1人が死体確認するシーンが終わったら、残り2人の死体確認シーンはカットするか、もしくは現場に入っていくシーンのみで終わると思うが、なぜか、わざわざ冗長なシーンにしている。
でもこの冗長な演出に特別の意味は無さそうで、その後も普通に淡々と物語が進行する。
ちなみにこのシーンで登場した2体の死体だが、ゾンビに噛まれて一晩経過してもゾンビ化しないのに、後のシーンでは噛まれてから数分後か数時間後にゾンビ化する登場人物もいて、とにかく本作では細かい祖語は気にしないし、伏線も回収しないし、物語を変にドラマチックにもエンターテインメントにしようともしない。
要するに、いつものジム・ジャームッシュ作品とほぼ変わっていないのだ。
本作のゾンビはジョージ・A・ロメロ監督『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の完全オマージュである
・・ということで、人に感想を聞かれたら面白い映画とは絶対に言えないが、自分的にはやはり面白い映画だった。
ビル・マーレイとアダム・ドライバーの淡々とした演技も、ありきたりと言えばありきたりだけど、やはり彼らでしか出せない味わい深さで、とにかく自分的にはサイコーの作品である。たぶん、もう1度劇場に観に行くと思う。
なお、まさかとは思うが本作に一般的なゾンビ映画を期待して劇場に赴く人がいたとしたら、あまりのつまらなさに悶絶するかもなので要注意。
・・念のためネット上の一般の人の映画レビューを読んでみたら案の定、「今まで観たゾンビ映画で最低最悪の出来!」とか書いてる人が多かったので、観に行く人は慌てないコト!