こんにちは!
「一人殺せば殺人者 何百万人も殺せば征服者 全滅させれば神」
(ジャン・ロスタン)
★★★ ご注意 ★★★
映画版の内容のネタばれを含みます!!
★★★ ご注意 ★★★
自身の生い立ちから中東派遣時の体験、そして退役後の暮らしまでを語っています。
ネイビー・シールズの約3年間の超過酷な訓練内容、特に、有名な基礎水中爆破訓練
(Basic Underwater Demolition/SEAL:通称BUD/S) の内容や、退役まで4回派遣された イラクでの戦場の日々、離婚率が95%といわれるシールズ隊員のなかで、強い愛情で結ばれた妻との関係、
(途中、妻のタヤ・カイルの回想もはさまれます)
そして、退役後の起業やボランティア活動など、映画を観た後であれば、より興味深く読める内容でした。
戦争や、戦争での殺人の是非はともかく、そして自身が最後まで
「敵の”野蛮人ども”を殺したことは全く後悔していない」
と語っていたことも抜きにして、
このクリス・カイルという人は強い信念を持っており
その生き方は誰にもマネできないものであり、
彼の生き様には素直に敬意を表したい、と思いました。
なお、映画版との違いですが、まずビックリしたのは、映画版では、ザルカーウィー(イスラム国の創始者)の右腕で、射撃の五輪選手だった宿敵・ムスタファとの戦いが戦場シーンでのメインになっておりますが、原作では、「元五輪選手のムスタファというスナイパーがいたそうだが、既に誰かが射殺した」と、ほんの数行しか書かれてませんでした(笑)。
もちろん、ザルカーウィーの”ザ”の字も出てません。
また原作では、イラク派兵から帰還したら1週間は自宅で引き篭もらないと通常生活に戻れない、度重なる派兵で欝状態になったことなどは語られていますが、映画版では、4回の派兵で精神が壊れていく過程をことさら強調して描いており、まさにPTSDがメインの作品となっています。
本書を読んで、
ロバート・A・ハインライン著『宇宙の戦士』を思い出しました。
両親の反対を押し切って軍隊に入った若者が、厳しい訓練や激しい戦闘を通して1人前の兵士に成長していく、という物語ですが、ハイラインの思想を反映した軍国主義的な作品でもありました。
そういえば『宇宙の戦士』を実写映画化したポール・バーホーベン大先生の『スターシップ・トゥルーパーズ』も、一見、軍国主義的なストーリーでありながら、実は軍国主義を思いっきり茶化している作品で、原作の意図を、ある種 違えた作品として映画化したという点で、『アメリカン・スナイパー』と似ているなと思いました。
クリス・カイルは本書を出版した約1年後に、彼が支援していたPTSDに悩む帰還兵に射殺されます。
常に死と隣り合わせだった戦場からやっと帰還し、退役後、家族と幸せに暮らし始めた矢先でした。
町山智浩さんがインタビューした際、クリント・イーストウッド監督は
「彼は運命につかまったんだ。」(Fate took him)
と言っていたそうです。
★★★★★
本書は、クリス・カイルの名言で溢れていました。
『母親に言われることとはちがって、暴力は問題を解決する』
『娘はまだ幼いので、それほど(狩猟に)興味を持っていない。
すぐに持つだろうが、いずれにせよ、充分な小火器の訓練を積まないうちは、デートは許可しない。
30歳くらいになるまではだめだ。』
30歳くらいになるまではだめだ。』
『兵役に行かない者やヤク中に多額の施しをする前に、
この国に尽くして負傷したアメリカ人の苦しみを思い出してほしい。』
『つまりその当時はわたしが愛していたすべてが変わりつつあり、
わたしは別の形で彼を愛さなければならなかったということ。
そのため愛情が薄れるのではないかとわたしは思った。
でも、そうではなかった。ただ、愛が変わったのだ。』
・・・タヤ・カイルの回想。
自身の優先度が、神>家族>国 であるのに対し、
長い兵役のなかで夫は 神>国>家族 となっていったことに対して。
『後悔はしていない。もう1度やってもいい。
だが、戦争はまちがいなく人を変える。
死を受け入れるようになる。』
『SEALになることは、暗黒面に落ちることだ。
完全に入り込んでしまう。
繰り返し戦争に行くことで、万物の最も暗い部分へと引き寄せられる。
すると精神が自分を守ろうとする。
だから頭が吹っ飛ぼうと、もっとひどいことが起ろうと、笑ってしまうのだ』
『普通の生活でも人は誰もが、毎日ストレスを感じている。
が、私にはそんなことはどうでもいい。
ストレスが自分の人生や一日を台無しにするのは些細な問題で、
もっと大きなひどいことも起りうるのだ。
私はそれを見てきた。 いや、そのなかで生きてきたのだ。」
それではー
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