こんにちは!
中川淳一郎。
氏の近著『謝罪大国ニッポン』を読みました。
プライベートな問題である不倫騒動でタレントが謝罪したり、事件を起こしたタレント本人ではなく親が謝罪するなど、本来は謝るべき事案ではないのに、「世間様」に納得してもらうためだけの謝罪会見に溢れる昨今の呆れた状況。
そんな日本社会を嘆きつつ、そうは言っても、謝罪の仕方をひとつ間違えるだけでタレント生命が絶たれたり、企業などは廃業に追い込まれるなど、非常に重要な謝罪の仕方 = 謝罪道 についても詳しく指南してくれる本書。
氏の提唱する正しい企業の謝罪会見としては、
・憔悴し切ってうなだれたオッサンが4人くらい並べばベター
・謝罪する側がエラソーにしたり高圧的な態度は絶対にタブー
・お辞儀をする際にハゲ頭が一つあるとビューティフォー!
まさに謝罪道の鏡のような会見!これぞ様式美!
ただし、土下座は諸刃の剣。
わざとらしさが過ぎると世間様に反感を持たれる。
また、やらされてる感が満載な謝罪も、世間様からは受け入れられない。
★★★★★
本書では企業間での謝罪文についても書かれていましたが、謝罪文といえば、私が所属しているIT業界でも定型スタイルが存在します。
以下は、私自身がよく使用するIT業界における謝罪文の定型フォーマットです。
1.序文
「この度は御社に多大なるご迷惑をお掛け致しまして、大変申し訳ございませんでした」
これについては、どんな業界でも共通だと思います。ただし、ついつい盛り過ぎてしまって、「今後このような障害が発生した際は、この腹カッ捌いてお詫び申し上げまする!」みたいに、あまり言い過ぎるとリアリティがなくなるので注意が必要です。
2.概要
序文に次いで、発生した障害のあらましを記述します。これもどの業界でも共通かと。謝罪事案の発生経緯と、自社がどのように迅速に対応したかを簡単に記述します。
大切なことは、簡潔に、かつ自社も先方も納得できる内容にすること。
(たとえ事実と違っても)
3.発生原因
IT業界の謝罪文書では、納品したシステムの障害(バグ)についての報告が殆どを占めます。障害の発生原因を技術的、かつ簡潔に表現する必要がありますが、しかしこの報告内容が一番大変で、本来、プログラムのバグ発生原因を正確に記述するには、かなりの文字数と詳細な図解が必要になるのですが、とにもかくにも簡潔なのが一番。
基本的にはA4用紙1枚の範囲内で書ききるのが望ましい。
(たとえ事実と違っても)
4.真の発生原因と対策
原因がわかったら、なぜそんな障害が発生したのか突き詰めて真の原因を解明し、それに対する対策も記述する必要があり、これを書くのがとにかく大変。
これは「なぜなぜ分析」という手法を使って、真の原因とその根本対策を(無理やり)導き出します。
例えば、バグの原因がプログラマによるソースコード(コンピュータ言語で記述されたプログラム本体)のパンチ入力ミスだった場合。
①なぜ入力ミスが発生したのか?
⇒プログラマが体調不良でボーっとしていたため作業ミスが発生した。
(本当はプログラマのデスマーチによる過労と寝不足が原因だが、それは言えない)
②なぜソースコード上の記述誤りが発見できなかったのか?
⇒ソースコード・レビュー(第三者を交えてコードの記述内容をチェックする会議)を実施した際に、レビューア(チェック担当者)が体調不良でボーっとしていて、つい不具合を見逃してしまった。
(本当はレビューアの残業超過による過労と寝不足が原因だが、それは言えない)
上記の分析より導き出される対策:
分析により、作業者が体調不良のためにボーッとしていのが真の原因で今回の不具合が発生しました。よって今後、弊社では、プログラマ、レビューアに毎日「メガシャキ」を支給して、目をシャキッとさせて作業させるよう改善いたします!
ということで、サルでも犬でも理解できる簡潔かつ、技術的な障害報告が書けるようになれば、もうこの業界では一流といえるでしょう。
・・・そう。
こんなことに時間を費やすヒマがあったら、会社側は社員の勤務時間を短縮する努力をして労働生産性の向上を図るほうがよほど、会社の利益を、ひいては日本の経済を向上させることに繋がると思われますが、会社が、社会が、そして謝罪大国日本がこれを許さない。
茶道、華道、剣道、柔道が日本から無くなっても、謝罪道だけは衰えずに続いていくことでしょう。
とにかく中川淳一郎さんの『謝罪大国ニッポン』、現代日本の情けない一面を鋭く斬っている面白い著作なので、みなさんも一読されてはいかがでしょうか。
それではー