『沈黙 -サイレンス-』 感想 ちょっとネタばれあり

こんにちは！

「パードレは決して余に負けたのではない」
「この日本と申す泥沼に敗れたのだ」

蜘蛛男、ジェダイ･マスター、暗黒面（ダークサイド）に堕ちた男、マイティ・ソーの側近、歌舞伎町のヤクザマンションを大混乱に陥れたジジィ、死のダイブから生還した男（あ、これは役じゃない）･･･
香ばしい作品のヒーロー達が終結した大作、『沈黙 -サイレンス-』の感想です。

ハリウッド映画ではお馴染みの、日本のトンデモ描写は殆どない。
まるで17世紀の日本にいるかのうよなリアルで濃密な2時間40分。

原作未読でストーリーも知らずに観ましたが、想像した以上の力作で、「信仰」とはいったいはなんだろうか、と深く考えさせられる作品でした。

日本に初めてキリスト教をもたらしたイエズス会。
そのイエズス会の若き宣教師・ロドリゴ神父とガルペ神父が、かつての師であり、徳川幕府のキリスト教迫害に屈して棄教したと噂されたフェレイラ神父を探すため、フランシスコ･ザビエルが始めて日本に降り立ってから約90年後の長崎に辿り着く。
当時の鎖国下によるキリスト教弾圧は凄まじく、ほどなくして2人とも長崎奉行に囚われの身となり、厳しく棄教を迫られる。

島原の乱を経てキリシタンにいっそうの警戒心を強めた徳川幕府だが、海外の宣教師を単に処刑するだけではますます国内のキリシタンの結束が強まることを恐れ、拷問と隠れキリシタンへの迫害等の精神的苦痛を与えて転ばせる（棄教させる）方針をとる。

囚われたロドリゴは殉教を望んだが叶わず、自分が棄教しないために、次々と殺されたり過酷な拷問を受ける日本人の信者達を目の当たりにして、激しく自責の念に苛まれ、最後まで沈黙をつらぬく神を嘆きながら、棄教の決意をする。

★★★★★

自分は現代社会において、宗教なんて全くナンセンスだと思っており、特に新興宗教を毛嫌いしているのですが昔、仕事の飲み会でとある新興宗教に属しているという女性に対して、新興宗教なんていかに馬鹿げているか、説教まがいに絡んで泣かせてしまったことがありました。
そのときに彼女をかばった同僚に、「無宗教」も宗教の一つであるから、他人の宗教をとやかく非難する権利はない、とたしなめられたことを思い出しました。

確かに、（身内ならともかく）他人の信仰をどうこう言う権利なんてないし、自分もまた、同調圧力が強く、世間の顔色を伺いながら生きなければいけない「日本社会」という宗教に囚われていると言えるかもしれない。

棄教したロドリゴはその後、「岡田三右衛門」という日本名を与えられて日本で亡くなるのですが、彼と、彼の師であり、同じく日本名「沢野忠庵」を与えられたフェレイラも、棄教した後に心底から信仰を捨てたのか、実は捨てていなかったのか。

棄教したのは虐げられた日本人の信者を救うための苦渋の決断であり、彼らは心の底では信仰を捨ててはいない、というのが本筋な読みなのでしょうが、自分としてはなんとなく、彼らはやはり、かつてのような無条件の神への信仰は亡くしてしまったのではないか？と感じました。

その代わりに、「諦念教」という宗教の新たな信者になったのではないでしょうか。

いずれにせよ人間は、何かに囚われずには生きれないと思いました。

余談ですがウィキペディアによると、浅野忠信が演じた通辞役、当初は「世界のケン渡辺」がキャスティングされたものの、本人のスケジュールの都合で役を降り、浅野忠信が代役に選ばれたそうです。

これは本当にラッキーだった！
もしケン渡辺がスクリーンに出てきたらあまりにくどすぎて、この静かな作品が「世界のケン渡辺」映画になってしまったことでしょう･･･（言い過ぎか）

『沈黙‐サイレンス‐』日本オリジナル予告

それではー

沈黙 (新潮文庫)

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