『メッセージ』を観に行ったという、行きつけの美容院のスタッフYさんによると、作品自体も面白かったが、監督は、あの『ブレードランナー』続編の監督でもあるとのこと。
ならば、今年の10月末に公開予定の『ブレードランナー 2049』の良し悪しは本作を観ることで占える、ということか。あれだけの名作の続編なので、相当な力量を持った監督か、もしくはマイケル・ベイくらい恐れ知らずじゃないと撮れないだろう。(本当にマイケル・ベイにオファーされてたら絶対映画ファンから暗殺されるだろうけど)
さて、カナダ出身のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の力量は如何に?
エイミー・アダムス(ディズニー映画『魔法にかけられて』の実写版お姫様役)が演じる言語学者のルイーズは、世界各地に突如現れた謎の異星人とコミュニケーションを取るミッションを政府に依頼される。異星人は人類とコンタクトを取る場所は提供しつつも、なぜか、自ら積極的に地球人に問いかけを行ってこないため、彼らが地球に現れた目的がつかめない。彼らの目的は地球征服なのか、人類との友好なのか、はたまた単なる観光なのか?
主人公が異星人とファーストコンタクトするシーンの緊迫感に溢れていること!
地味ながら、かなり見応えのある作品。
『インデペンデンス・デイ』以降、異星人とのコンタクトを描いた映画と言えば地球侵略が目的の醜悪なエイリアンとの闘いを描く、知性を感じさせない作品ばっかり。(最近話題になった『バトルシップ』も同様)本作みたいに、抒情的でインテリジェンスなSF作品は珍しい。う~んこの作品、ローランド・エメリッヒなんかが監督する案件では絶対にない。
なお本作は、テッド・チャンの短編小説『あなたの人生の物語』("Story of Your Life")の映画化作品だということで(ちなみに映画の原題は『Arrival』(到来))、早速短編集を購入し、とりあえず『あなたの人生の物語』だけ、朝の通勤時にササッと読んでみた。物理や数学をモチーフにした作品が多い作家さんらしく、正直、一回読んだだけでは(というかいくら読んでも)理解しきれない難解な概念や用語も多かったけど、総じて興味深い小説だった。
キーワードは「フェルマーの原理」。
「2点を結ぶ光が進む道のりはその光学距離を最小にする」・・・光は進むのにかかる時間が最小になる経路を通る
イコール、
光は自分自身が到達する場所が最初からわかっている = 未来を知っている ってこと? …ちょい難解。
しかし原作を読んで驚いたのは、原作のストーリーが想像以上に地味だったということ。
なおこの映画版も、昨今のハリウッド映画にしてはむしろ地味な作品だったが、実は小説版と比べると、かなり映画的なエンターテインメント作品に脚色されてたんだな、と改めて気づかされた。(むしろ、そこまで脚色していいの?くらいのレベルで、この脚色によって、原作にはないストーリー上の矛盾点や突っ込み所が増えたきがするが、・・・まぁ映画なのでそこはしょうがない)
・・・もちろん、原作には中国共産党の暴れん坊・シャン上将は登場しない、とだけ申し上げておきます。ただ原作は短編ながら、エンターテインメントな映画版よりも深く、よりインテリジェントな作品なのは間違いない。
というわけで、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。
そもそも『ブレードランナー』の原作である『アンドロイドは電気羊の夢を見るか? 』も、それほどドラマチックな小説ではなかったが、リドリー・スコット監督の手腕によって、ブルージーで幻想的な作品に生まれ変わった。
割と地味な短編をこれだけの大作に仕上げたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、これは『ブレードランナー 2049』も大いに期待できるのではないか?
なおドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、デヴィッド・リンチ監督の怪作『デューン/砂の惑星』のリブート版の監督にも決定したそうで、個人的に大好きな作品のリメイク、この監督ならそれなりに仕上げるのではないだろうか。

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