okurejeの日記

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小説『美しい顔』を読んだら普通に刺さった! ~ 北条裕子さん、荻上チキさん、ゴメンやで!m(__)m

『第61回群像新人文学賞』を受賞し、芥川賞の候補作品にもノミネートされた北条裕子さんの小説『美しい顔』。


その作品中のいくつかの描写が、他の著作の文章をほぼそのまま使用しているのでは?
所謂「パクリ」ってことで絶賛炎上中の案件。

 

引用されたといわれる数冊の著作の中で、自分も以前に読んだ石井光太氏の『遺体: 震災、津波の果てに』の問題の文章と『美しい顔』の当該文章、確かに、少し言い回しを変更した程度で、ほぼ同じ文章に感じた。
いくらなんでも、仮にも小説家を名乗ってフィクション作品を書く人が、ノンフィクション作品の文章を捻りもせずにそのまま使用するなんて、どんだけ矜持がないんだよ!と思わずにはいられなかった。

 

そして、荻上チキさんがラジオで本件について語った所感の書き起こし文章がネット上で話題になっていて読んでみたんだけど、イマイチ歯切れの悪い言い回しで『美しい顔』を擁護されていたのに思わず、脊髄反射で以下のようなツイートで悪態をついてしまった。(ジオの聞き起こし文章だから歯切れが悪くて当たり前なんだけど・・)

 

 

しかし一夜明けて、「作品を読んでもいないのに批判するとは何だ糞が!ヴォケが!恥を知れ!」という意見もネット上で散見され、そして驚いたことに、『群像』の発行元である大手出版社の講談社が、件の作品を全文無料公開したという普通では考えられないニュースにも接した。

http://book-sp.kodansha.co.jp/pdf/20180704_utsukushiikao.pdf

 

現在、呉智英先生の『現代人の論語』を読んでる最中で、しかも『英語耳』を読んで英語の勉強中。小説なんて読んでる暇なんて無いんだけど、まぁ、タダなら、アレか。読ませてもらうか・・・
ってことで会社帰りにネットで読ませて頂いた。

 

読み始めはどうしても悪い先入観があったので否定的な読み方をしていたんだけど、読み進めていくうちに普通に引き込まれてしまった。

 

予期せぬ天災でいきなり母親を亡くし、幼い弟とたった二人で残され、とんでもない非日常に晒された17歳の女子高生の心理をリアルに描いた作品。


荻上チキさんも指摘されていたが、被災者でもなく実際に被災地に行ったこともないという著者が、未曽有の天災であった東日本大震災の被災者を架空のキャラクターとして創り上げたことには、大いに意義があると思った。

実際に、感動ポルノを売り物にするマスコミと、彼らに迎合して世間ウケする可哀そうな被災者を図らずも演じてしまった人達もいただろう。

そして、マスコミが一方的に垂れ流す可哀そうな被災者イメージに対して違和感を抱いている被災者や、我々のような単なる傍観者だが、マスコミが押し付けるイメージに違和感や、果ては嫌悪感すら抱く非被災者にも、いろいろと響かせてくれる小説だと素直に感じた。

 

また、「東日本大震災の教訓を風化させてはいけない」という、ある種ありきたりで優等生的なコピーだが、なぜ風化させてはいけないのか、という点についても本作ではあえて言わず語っている。
津波がすぐ背後に迫っているのに未経験の災害に危機感を察知できずに逃げきれなかった人たちや、災害をからくも逃れた人たちが、災害直後に避難所で味わった苦労などの過去の苦い経験の記憶は、今後、再び訪れる可能性のある災害発生時には絶対に有益だ。

 

今現在、全方位から批判されている講談社があえて、さらなるクレーム覚悟で本作を無料公開しても読んで欲しい、という意図がと自信が、なんとなくわかった。

 

・・・つか、北条裕子さん、荻上チキさん、ゴメンやで~~~!

 

花眼

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群像 2018年 06 月号 [雑誌]

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遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫)

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現代人の論語 (ちくま文庫)

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