『レディ・プレイヤー1』の原作者アーネスト・クラインの2作目になる小説『アルマダ』。
Amazonレビューではラノベと揶揄され、ストーリーには確かにヒネりも少なく、キャラクター造形も『レディ・プレイヤー1』ほど深くはないものの、さすが筋金入りのギークであるアーネスト・クラインの本領発揮!といった作品。
『レディ・プレイヤー1』と同様、80年代ポップカルチャーの知識がこれでもかと展開されており、自分もほぼ同世代なので、とても楽しく読めてしまった。
そしてストレートな王道ストーリであるからこそ、素直に泣ける物語にもなっている。
超人気のオンラインゲーム上で世界ランキング6位の腕前をもつゲーマー、高校生のザックが主人公。
ある日ザックが授業中に、ゲームに登場する敵エイリアンの戦闘機とそっくりな飛行物体を現実に目にしたことから物語が始まる。ゲーム上の世界にしか存在しないはずのエイリアンや、敵味方の戦闘マシンはなんと、実在したのだ!
地球防衛同盟軍なる組織が、来るべきエイリアン襲来に備えて密かに戦闘マシーンを建造し、オンラインゲームは、一般人に戦闘マシンの操縦方法を教えるための戦闘訓練シミュレーターだったのだ。そしてオンラインゲームの上位ランカーは、必然的に対宇宙人との戦闘プロフェッショナルでもある。なのでオンラインゲームは、密かに彼らをスカウトするためのツールでもあったのだ。
いきなり地球防衛同盟軍にスカウトされたザックは最初から中尉の階級を与えられ、エイリアンとの壮絶な戦闘に放り込まれる。
まず、主人公たちが軍人など戦闘のプロでも、強靭な体力と運動神経の持ち主でもなく、単なる一般人(しかも高校生)であり、彼らゲーマーが地球を守る第一線の兵士となる設定が面白い。
考えてみれば現代は、遠隔操縦されたドローンが異国の戦場の敵兵を虐殺する世の中だ。作中でも主人公が語っていたが、『スターウォーズ』などのSF作品でいつも不思議に思うのは、あれほど高度な科学力を持っているにも関わらず、なぜ戦闘機は遠隔操縦ではないのか?ということ。
どれだけ優秀なパイロットでも、たった一回の攻撃で殺されたらそれまでだが、遠隔操縦の戦闘機であれば、マシンが撃墜されても、次のマシンで戦闘再開が可能だ。
本作『アルマダ』では当然、戦闘マシンは遠隔操縦であり、しかも操縦は使い慣れたゲーム機のコントローラーである。一般人でも多少のゲーム操作が出来ればエイリアンとの闘いに参加可能だし、しかも自機が破壊されても、すぐさま他の戦闘マシンに次々切り替えて戦闘を延々と継続できるのだ。とても合理的なアイデア。
なお『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』では、敵の戦闘員はドローンだったが、あれは戦闘の効率が考慮されたワケではなく、あくまでジェダイがライトセーバーでバッタバッタと敵を切り殺しても、流血が無いので観客に残虐性を感じさせないための、単なる演出上のアイデアだ。
そして本作の魅力は、何と言っても、次々と出てくる往年の80年代SF映画などの名セリフ。『レディ・プレイヤー1』でも、信じられないくらいSF映画やゲームの知識が披露されていたが、本作でも、思わずニヤリとしてしまうほど、マイナーな作品のセリフがちりばめられていた。
特に笑ったのが、往年のSF映画『ゼイリブ』の名セリフを、主人公と同じく、オンラインゲーム上位ランカーの中国人の少年が中国語で叫び、それが変な英語で翻訳されて主人公たちを感動させるという、アーネスト・クラインならではのお馬鹿で胸アツなシーン!
『ゼイリブ』で主人公ネイダが、銀行でエイリアンを容赦なくライフルでぶっ殺すシーンのセリフ。(特に意味はないアドリブのセリフ)
英語:I have come here to chew bubblegum and kick ass... and I'm all out of bubblegum.
(日本語意訳:おれはガムを噛んでから、銃をぶっ放すぜ、ガムは切れちまった!)
中国語訳:僕らはケツを蹴飛ばしてバブルガムを噛みにきた、しかしバブルガムは品切れ!
先週、映画館で『ゼイリブ』のリバイバル上映で観たばっかりだったので、このタイミングにビックリしてしまった。
『レディ・プレイヤー1』に続いて、いずれ間違いなくハリウッドで映画化されるに違いない本作。どんな映像作品に仕上がるか想像しながら読んでみるのも楽しいかも。
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