一昨年、池袋の新文芸座での「スタンディング強制上映」では、我ながらキ〇ガイか?と思うほど絶唱しまくった『ストップ・メイキング・センス』だが、今度はお馴染みの立川シネマシティで極上音響上映されるという。しかもピーター・バラカン氏のトークショー付きとのことで、平日の夜だというのに仕事を早引けして立川まで出かけて行った。
立川直樹氏とピーター・バラカン氏の対談では、お二人とも過去に日本でデヴィッド・バーンのインタビューをされたほどなので、トーキング・ヘッズには当然詳しく、本作についてもトリビアな解説を行ってくれた。
お二人とも、この作品のライブ・パフォーマンスとトーキング・ヘッズの楽曲がいかに当時からも斬新で都会的で素晴らしいかを語られていたが、その際に立川氏が、「当時に比べて最近のロックは全然つまらなくて、現在のMTVで放送されている楽曲なんて酷いもんですよ」的なお話をピーター・バラカン氏に振ったら、それを受けたピーター・バラカン氏、まずは苦笑いをされた。
・・なるほど、例のBABYMETAL舌禍事件があるので、苦笑のみでノーコメントなのかな?と思ったら、苦笑いされたあと即座に「(今のMTVなんて)見てません!」と言い切られたので笑ってしまった。さすがバラカン!
さて本編。
さすがに極音上映ということで、確かに迫力あるサウンドだった。
今回は音響の調整を新たにされたとのこと。本編中にクローズアップされている楽器の音が特に強調されて響いているように聴こえたのも音響調整のたまものだろうか。
なお今回はシッティング上映のため大人しく鑑賞するしかなかったので、じっくりと映像を堪能したが、改めて本作の素晴らしさを再確認できた。
トークショーで立川氏も言われていたが、メンバーが美術大学出身だけあって、ステージセットはもちろん、衣装やステージ背景のビデオ映像も先鋭的で、今観ても十分にオシャレでカッコいい。
デヴィッド・バーンはもちろん、他のメンバーの振付も斬新で迫力があるし、アフリカン・ミュージックをベースにした楽曲もとにかくカッコいいのだが、ただ本作の人気が未だに衰えないのは、もちろんトーキング・ヘッズのパフォーマンスが素晴らしいのは勿論だけど、やはりジョナサン・デミ監督の演出力にもよるんだな、と感じる。
有名な『サイコ・キラー』から始まるオープニングでは、大型ラジカセだけを持ってステージにやってきたデヴィッド・バーンの足元のみをズームし、徐々に全身をズームアウトしていく演出、1曲ごとにメンバーが1人ずつ登場するステージ構成では、ドラムセットやキーボードの台座をスタッフがステージに運んでくるシーンを静かにパンしていく演出、アーティストの顔を下らか照らして不気味なシルエットに映し出す照明演出など。
ライブ中盤からメチャメチャ盛り上がってくるシーンではアーティストの熱狂がズンズン伝わってくるし、エンディングでは長いパフォーマンスを観客もいっしょにプレイしてきたかのような高揚感まで感じてしまう。
これ、昔はデヴィッド・バーンのパフォーマーとしての力量が強いからこれだけのライブ映像が出来上がったとしか思ってなかったが、いやいや、トーキング・ヘッズの魅力を300%くらいに引き上げたのはデミ監督の演出力が凄すぎたからだと改めて気付かされた。
ピーター・バラカン氏によると、ライブは4日間の連続公演だったそうだが、4日間とも別のアングルで撮影を行い、編集作業によって迫力ある1つのライブに仕上げたそうだ。
今までいろんなライブを生で観てきたが、ハッキリ言ってこの『ストップ・メイキング・センス』ほどカッコよくて素晴らしいライブはないと思っているのだけど、これ、監督の演出力の賜物だったんだな。
この作品を語るときに、なぜ監督の名前がクローズアップされているのか不思議だったが、今回ようやく理解できた。・・って、今更か!
もちろん今回も満員のお客さん。
エンドロールが終わって上映終了と同時に、お客さんから自然と拍手が沸き上がった。
- アーティスト: トーキング・ヘッズ,デビッド・バーン,クリス・フランツ,ティナ・ウェイマウス,A.グリーン,J.ハリソン,M.ホッジズ,B.イーノ,A.ビリュー,S.スタンリー
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
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