奥井喜美直さんの「アマダイ」という絵画作品。
魚のような人間のような妖精のような、この不思議な絵に惹かれた。
シャガール作品のような、なんとも幻想的でキャッチャーな絵画。
作者がハンセン病回復者であるという情報よりも、単純にこの絵に魅せられて、フラフラと絵画展にやってきた人も多いようだ。自分もそのひとり。
国立ハンセン病資料館の学芸員であり民俗学者でもある木村哲也さんのツイッターで絵画展の詳細を知り、初めて国立ハンセン病資料館に訪れてみた。
国立ハンセン病資料館2Fの企画展示室に展示されているのは、奥井喜美直さんの他、熊本県のハンセン病療養施設・菊池恵楓園で発足された「金陽会」という絵画クラブの会員の方々の作品で、作品点数はそれほど多くはないが、どれも印象的な絵画ばかりで、非常に引き込まれてしまった。
特に印象に残ったのが、木下今朝義さんの作品と、中原繁敏さんの作品かな。
木下今朝義さんの「集団脱走」は、タイトルは物騒だが絵柄と構図がかわいらしくて、そのギャップに惹かれた。
中原繁敏さん作品は色彩が鮮やかながら深くて、しかしながら構図がシンプルなので、とても観やすい作品になっている。
ちなみに本展の図録だが、資料館の受付の方にお願いしたら、なんと無料で頂ける。
10人の出展者のうち、まだ存命されているのは吉山安彦さんだけだそうだが、図録内には、既に鬼籍に入られた奥井喜美直さんや他の作家さん達の懇談記事が掲載されており、なかなか興味深い内容だったので、これから訪れる方は忘れずに頂いてきましょう。
また、本来はメインながら、企画展のついでに見学した常設展の各種展示物や資料が想像以上に充実していてビックリしてしまった。ハンセン病については通り一遍の知識も無かったのだが、詳細かつわかり易い展示説明のおかげで、多少の概要は学べるようになっている。
ただ、あまりにも資料が豊富なので、鑑賞する際はそれなりに腹を据えてきたほうがいい。ついでのつもりで鑑賞したら、途中で足が疲れてしまったので、次回訪れる際は気合を入れて来なければ。
なお帰りは、多磨全生園の敷地内を歩いてみた。
・・というか、敷地内に足を踏み入れることが出来るということすら知らなかった。
河瀬直美監督作の名作『あん』の撮影場所が多磨全生園だったことすら、この地に来る途中で知ったくらいだ。
『あん』では千太郎(永瀬正敏)と女子中学生ワカナ(内田伽羅)がハンセン病の療養施設内に入っていったが、あれは徳江(樹木希林)に会いに行くから訪問を許可されたのだと思っていたが、多磨全生園は、1部の入居者エリア以外は普通に立ち入り自由だと言うことも初めて知った。
広い敷地内はほぼ人気がなく、なんとなく気が引けてしまったが、また近いうちに是非訪れたいと思った。そして、『あん』にも登場した多磨全生園内の「お食事処なごみ」でランチを頂きたいな。
『キャンバスに集う~菊池恵楓園・金陽会絵画展』は今月の7月31日(水)までなので、お早めに。