ドニー・イェン師父の代表作にして全世界で愛されている『イップ・マン』シリーズの最終章ということで、本来は日本におけるイップ・マンの聖地である新宿武蔵野館で鑑賞すべきだが、新型コロナ禍の渦中、まだまだ新宿には不要不急で立ち寄りたくないのと、なにより高低差問題で鑑賞中に余計なストレスを感じたくない!
ということで、立川シネマシティの極上音響上映で鑑賞することに。
さて、10年以上続いたイップ・マンの完結編であり、かつドニー・イェンの最後のカンフー映画となる本作。(今後もアクション映画には出演するが、カンフー作品で演じるには、長年のキャリアで満身創痍となった身にはもう限界との判断とのこと)
妻を亡くして数年後、次男と二人で静かに暮らすイップ・マンも既に老境に達していた。ある日、医師に喉頭癌であることを告げられ、人生の終焉も近いと悟る。
そんな中、喧嘩沙汰で学校を退学した次男をアメリカへ留学させるため、留学先の視察と弟子であるブルース・リーとの再会も兼ねて単身で渡米するが、旅先のサンフランシスコにて、チャイナタウンの中華総会とアメリカ海兵隊とのトラブルに巻き込まれてしまう。そしてついに、中華民族いや、アジア人全ての誇りをかけて、人生最後の大試合に挑むイップ・マンだった・・
なお今回のラスボスはスコット・アドキンス演ずるアメリカ海兵隊の軍曹だが、トランプ大統領ばりの人種差別主義者で見た目がまんま『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹なのに、彼と対立する中華系の軍曹の名前がハートマンだという、一瞬、訳の分からない設定になっている。
ドニー・イェン師父の殺陣はますます凄みを感じさせるほど迫力があるし、太極拳の師匠との闘いや白人の空手使いとの異種格闘戦も緊張感がハンパない。
また、実はたいした話でもないのにやたらドラマチックに演出されるイップ・マンと家族とのふれあいの話も感動的ではあるのだが、チャイナタウンの中華総会長で太極拳の達人との、当初の反目からの友情へと変わっていく設定や、その達人が白人の異種格闘者に敗れ、その復讐のために闘いに挑むというプロットは、まんま、2作目の『イップ・マン 葉問』そのもの。
よそ者のイップ・マンを最初は認めなかったサモ・ハン・キンポー演じる香港武館の元締で洪拳の達人、ホンと次第に友情を築いていくが、イギリス人ボクシングチャンピオンにホンを殺され、復讐のために異種格闘戦に挑むという・・
舞台を香港からサンフランシスコに移しただけやないかい・・
また2作目でも感じたのだが、あれだけ重量のありそうな白人の重いパンチを何発も喰らって、体格差で圧倒的に劣るアジア人が本当に勝てるのか、あの肉厚なボディに致命的な打撃を与えられるのか、映画とはいえ、どうしても疑問に感じてしまう。
タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で、なんとブルース・リーがブラピにブッ飛ばされるという衝撃シーンがあったが、まぁ実際には、あのクソデカい欧米人を格闘技でぶっ倒すのは相当に難儀な気がして、イップマンの2作目と4作目である本作には、ちょっとだけ気恥ずかしさを感じてしまうのである。
なので自分としては、3作目の『イップ・マン 継承』が一番よく出来た作品だと思っている。
欧米人の異種格闘戦では、なんとあのマイク・タイソンと対決するというメチャクチャなシーンもあるが、迫力があり説得力もある殺陣が展開されていたし、結局引き分けるのでお祭り的なノリで楽しめた。
アクションシーンもどれも素晴らしく、ムエタイ拳士とのエレベーターや階段での狭い場所でのバトル、ラストバトルは同じ中国人で詠春拳マスターであるマックス・チャンとの闘いだったが、同門同士の闘いで凄く緊張感のある殺陣を堪能できた。
やはりアジア人同士のバトルシーンのほうが説得力があると感じてしまう。
とはいえ、前作まではモノマネ芸のみだったブルース・リーの登場シーンでは、チャン・クォックワンの迫力あるブルース・リーのアクションシーンを堪能できるし、何といっても、もはや神様みたいなドニー・イェン師父の最後のカンフー映画である。
これはもう、劇場で観るしかないでしょう!
そして忘れてはいけないのが本作のパンフレット。
なんと1,200円と高額だが、内容はかなり充実していて、とりわけ谷垣健治氏の作品解説が本職だけにやたらリアルで、谷垣ニシパのテキスト部分だけで十分に元が取れる内容。
このパンフレットも買うしかないでしょう!
【公式】『イップ・マン 完結』さよなら、イップ・マン。/7/3(金)公開/本予告