『AVA/エヴァ』　感想 - okurejeの日記

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『女神の見えざる手』以来ファンになった名優ジェシカ・チャステインが凄腕の暗殺者を演じるアクション映画ということだが、それほどアクションに長けた俳優さんとも思えないので、あまり期待せず観に行った。

しかし女性が主役のアクション映画と言えば、2017年公開のシャーリーズ・セロン主演『アトミック・ブロンド』と、どうしても比較せざるを得なくなってくる。とにかく『アトミック・ブロンド』のシャーリーズ・セロンの格闘アクションの迫力は凄まじいもので、体格差で勝る男性にいかに打ち勝つかというリアルな近接格闘の描写は驚異的だった。

『AVA/エヴァ』のジェシカ・チャステインのアクションも思ったよりも迫力があって、格闘シーンのスタイリッシュさよりも、ボコボコに殴られながらも執拗に打撃を与えて食い下がり、ついに屈強な男性を倒すというリアルさを重視した演出は『アトミック・ブロンド』に近いものがあった。・・ただやはり、格闘アクションの激しさ、衝撃度は『アトミック・ブロンド』を超えるものではなかったけど。

ただ本作は、アクションだけでなく意外にもストーリーも渋くて良かった。
それこそ『アトミック・ブロンド』なんて、ストーリーは全くのステレオタイプ。主人公はMI6の凄腕スパイで、CIAやらKGBやらの各国のスパイと国境を越えた諜報戦を繰り広げつつ、シャーリーズ・セロンが格闘でボコボコ屈強な敵を倒していくという派手なだけで中身は薄いお話で、とにかくシャーリーズ・セロンの格闘戦だけを楽しむ映画だったと言える。
比べて『AVA/エヴァ』の主人公は、大学を主席で卒業するほどの秀才だったが父親との確執がもとで家出し、酒とドラッグに溺れながらも立ち直って軍隊に入り、除隊後は民間の暗殺組織に属して凄腕の暗殺者となるという、何気に地味なイントロダクションでスタートする。『アトミック・ブロンド』と比べると、片やMI6の諜報員、片や家族経営みたいな民間暗殺組織の暗殺者というパッとしない設定が逆に妙なリアルさを生んで、ジェシカ・チャステインの演技がまた上手いものだから余計に人間臭いドラマに感じてしまう。
そんな主人公も暗殺者稼業に疲れを感じ、休暇を取って8年振りに実家に戻るが、父親が亡くなってから病気になった母親や、自分の元婚約者だった男性と婚約した妹と久しぶりに会ってもしっくりいかず、久しぶりの家族との再会にもストレスを感じてしまうという・・　そんなスケールの小さい悩みをかかえる主人公だが、さらに所属の暗殺組織のボスから、「最近、気合いが足りねぇ！」という家族的な理由により粛清のターゲットにされ、自身が暗殺者に命を狙われるハメになる・・　地味でいいぞ！

キャストはジェシカ・チャステイン始め、民間暗殺組織のボスにコリン・ファレル、暗殺の師匠役にジョン・マルコヴィッチ、その他ジーナ・デイヴィス、ジョアン・チェンなど、脇役も名優揃いで渋い演技を見せるが、あくまでストーリーも設定もキャラクターも地味というアンバランスさも、また不思議な魅力の映画。

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