okurejeの日記

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『DUNE/デューン 砂の惑星』 感想

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アレハンドロ・ホドロフスキー監督の『DUNE』がもし完成していても、さほど観たいとは思わないが(『ホドロフスキーのDUNE』で十分)、独特のセンスを持ったドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『デューン』であれば、それなりの作品に仕上がっているだろうと期待して観に行った。

 

1985年に日本公開されたデイヴィッド・リンチ監督の『デューン/砂の惑星』は興行的に振るわず、監督自身も失敗作と認めているが、一部のファンにはカルト的な人気がある。自分もお気に入りの作品で、DVD、Blu-rayと媒体が変わるごとに買い替えているが、数か月前、何年かぶりに鑑賞しなおしたら、確かに後半はストーリー展開が駆け足過ぎて、なるほどダイジェスト版の作品と言われるだけある、と改めて思った。
それでもリンチ監督の変態的なキャラクター造形とゴシック&グロな衣装や舞台のセンスは今観ても秀逸なので、リンチ監督の『DUNE』を超えるリメイクはなかなか難しいだろう。

なおフランク・ハーバートの原作は第6作まであり、デイヴィッド・リンチ監督版で映画化されているのは第1作。

 

アトレイデス公爵家の後継者であるポール・アトレイデスは、宿敵ハルコネン男爵家の策謀のため砂の惑星アラキスの砂漠に追放されてしまう。しかし、現地の民であるフレーメンを従え、ハルコネン家を倒し、陰で糸を引いていた宇宙帝国の皇帝・シャッダム四世をも圧倒し、ついに、フレーメンの宗教的指導者「ムアッディブ」となって新たな勢力を立ち上げる。

ここまでが第1作で描かれているのだが、登場人物、対抗勢力、専門用語が満載の壮大な大河ドラマであり、第1作だけでも1本の映画作品に仕上げるのは無理ゲーな小説である。

そんな長大なストーリーを、リンチは無理やり137分の作品に編集させられたのだ。そりゃ監督の意向は無視され、ダイジェスト版にならざるを得なかっただろう。


小説版の第1作では、皇帝とハルコネン男爵家の陰謀によりアトレイデス公爵家が壊滅し、ポール・アトレイデスと母親のジェシカが惑星アラキスの砂漠に追放され、親子が砂漠を放浪しながら現地の民フレーメン達と出会うまでが前半、ポールがフレーメンの指導者となってハルコネン男爵家に反乱を起こし、ついにハルコネン家を倒してアラキスに神権政治を樹立するまでが後半のストーリーとなっていた、と思う(原作を読んだのが何十年も前なのでほぼ記憶がないが・・)。

リンチ監督版『DUNE』では、前半までは割とじっくり描いているので見応えがあるのだが、後半からの流れが早すぎて、それこそダイジェスト版のようになってしまっていた。

 

さて、前振りが長すぎたが、ヴィルヌーヴ監督版『デューン』はどうだったのか・・

映画を観るまでは、本作が二部作であることは全く知らなかった。
オープニングで、「Dune: Part One」と流れていたので初めて気が付いたのだが、少なくとも日本のプロモーションでは二部作であることを全く謳ってなかった!

・・それってどうなの!?と思う。
それでも鑑賞中は、もしかして二部作というのは小説版の第2作目までを意味してて、少なくとも本作ではリンチ監督版と同様、小説版の第1作目までは描き切るのでは?と淡い期待を持っていたが、見事に第1作目の前半で終了してしまった。

二部作であれば、尺の都合上、ここらで物語を終わらせるのは確かに妥当なのだが、これだとアトレイデス家がやられっぱなしのままエンドタイトルになるため、本作を一つの映画作品としてみると、起伏のない地味な印象しか残らない。しかもリンチ監督版と違って、(味気ない)ナレーションによる物語の世界を補完するための解説も一切ないので、初めて本作に触れる観客には敷居の高い作品になったことだろう。
しかも宇宙帝国の皇帝・シャッダム四世はおろか、あの宇宙協会(スペーシング・ギルド)の航宙士(ナビゲーター)も第1部では登場しないため、お預けを食らった感が半端なかった。

 

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もちろんドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作であるため、キャスト、衣装、舞台、マシンのどれも重厚でデザインもゴシックで素晴らしく、ハンス・ジマーの映画音楽も”ヴォ~~ン”感あふれていいのだが、『DUNE』の実写ヴィジュアルにおけるキャラクター造形やスタイルは、デイヴィッド・リンチ監督が既に完成形をクリエイト済みであったため、それを現代的なセンスで再構築しただけとも言える。
また、リンチ監督版と違って155分もかけて物語の前半部分をじっくり描き過ぎたせいか、多少冗長な印象も拭えなかった。
しかしヴィルヌーヴ監督でなければ、これ程までの完成度でリメイク出来なかったのは間違いないのだが。
あと、ヴィルヌーヴ監督版では、キャラクターもリンチ監督版ほど変態チックに描いていないので、本来の物語に相応しい落ち着いた物語に仕上がっていた。

 

本作があえて二部作であることを積極的にアピールしなかったのは、続編製作は本作の興行成績いかんでジャッジされるためであったらしく、興収が振るわなければ、サラりと後半を製作しないまま終わる運命にあった。・・三池崇史のジョジョ実写版みたいに。
しかし、なんとか昨日(2021年10月26日)、続編製作が決まったようで良かった!
なんだかんだ言ってもヴィルヌーヴ監督の『DUNE』は素晴らしい作品で、後半分のストーリーを、本作の高いクオリティのまま描き切って欲しいと切に願っている。(デイヴィッド・リンチ監督が無しえなかったので、是非とも傑作に!)

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