okurejeの日記

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『川っぺりムコリッタ』 感想

 

劇場で邦画の予告を観るのが苦痛。
安易な漫画の実写化作品か若者向けの恋愛もの、もしくはテレビドラマの劇場版ばっかりで、予告が始まったらあえて目をそらして視界から外すようにしている。
・・まぁ、世界各国どこも同じで、本当に観るべき作品はその年に製作された全作品の2割程度に満たないだろう。わざわざ日本で公開される海外作品はその2割から選別されているので、どうしても自国の上映作品の方が数も多くなり、駄作が多いと感じてしまうのだけど、それにしてもつまらなそうな邦画が多い昨今。

そうは言っても日本映画の質は世界最高峰だと思っているし、そして、間違いなく、その日本映画史における名作のひとつに数えられるのが『かもめ食堂』で、その監督である荻上直子監督の最新作が、『川っぺりムコリッタ』

 

ということで、なんかワケのわからないタイトルで映画観た後も覚えられないんだけど、ジャケ買い感覚で本作を観てきたんだけど、端的に言って素晴らしい作品だった。

 

 

・・なんか暗い影を纏っている30歳前後の男(松山ケンイチ)が富山地方鉄道のとある駅に降り立ち、イカの塩辛工場に就職するシーンから本作は始まる。彼はどうも刑務所から出所して間もないようで、自分の今後の人生に明るい展望を持っていないながらも、とりあえず川べりの古びたアパートに入居して新しい生活を始めようとする。「ハイツムコリッタ」という、時間が止まったような安アパートに引っ越してきた初日、隣人だという、ちょっと図々しい男(ムロツヨシ)にいきなり訪問され、初対面だというのに「風呂を貸してくれ」と無茶な要求をされる。・・当然追い出すが、このアパートにはその他にもクセが強い住人や管理人もおり、見知らぬ土地で誰にも邪魔されず静かに暮らしたい。・・あわよくば、川の氾濫に呑まれて死んでしまいたいという、消極的な希死念慮も、ムロツヨシと彼の周りの住人のお陰であえなく潰えてしまう。。

 

ちょっとラストが、先週鑑賞した『NOPE/ノープ』のようでもあり、なんとなくイメージしていた荻上直子監督の作風と違って、まずテーマが重く、中盤以降も暗いストーリーでありながら、やはりホッとするような作品で、ファンタジー色も強くて、これは本当にいい映画だな、と観終わった後にしみじみと感じた。

 

そしてムロツヨシ。
福田雄一監督色が強すぎて、「もう福田雄一のムロツヨシはお腹一杯!みたくない!」と思わせるほど福田雄一臭が強い俳優さんだと思っていたが、やっとムロツヨシらしいムロツヨシの役柄を劇場で満喫することができて幸せだった。江口のり子の贅沢な使い方もすごく良くて、いいところしかない作品といえる。

 

なお、最初に本作を企画したときに映画化できなかったのが悔しくて眠れなかった荻上直子監督が、「じゃあ原作があれば映画化できるのか!」と思い立って書かれたという小説を、本日電子書籍版で読んだが、昨日観た映画の余韻を思い出して、ところどころ泣けてしまった。

過去に映画のノベライズを読んだ経験から、ノベライズは諸刃の剣で、作品の意図が深くわかる分、映画自体がちょっと物足りなく感じることも多々あったが、こちらの小説はいい塩梅に仕上がっていて、あくまで映画の良質なサブテキストの位置づけであり、主役は映画で、語り過ぎず、映像がよりよく印象に残る手立てとしての役割として機能していて、映画もノベライズもいいバランスで成り立っていた。

 


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荻上直子監督、いいよね。日本映画界の至宝。

 

 

 

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