okurejeの日記

フィギュアや映画や本などについて、ゆるく書かせていただきます。

『裸のムラ』 感想

 

ポレポレ東中野で絶賛上映中の五百旗頭(いおきべ)幸男監督作品『裸のムラ』を観てきた。

 

 

生まれも育ちも石川県金沢市なので(現在は東京在住だが)、このコロナ禍、全国区で炎上した谷本正憲・元石川県知事や、東京オリパラで大炎上した森喜朗・元総理、一昨年にセクハラ疑惑で炎上した馳浩・現石川県知事には、当然ながら大いに興味がある。そんな御大方を揶揄したようなドキュメンタリー作品だと期待して観に行ったのだが、思ったのと違った作品だった。

 

プチ鹿島さんが本作へ寄せたコメント

「「森喜朗」「馳浩」「北國新聞」。私の大好物を存分に鑑賞できる作品だと思ったら想像を超えてきた。」

・・が、まさに言い得て妙。

 

 

 

冒頭、石川県庁舎に黒塗りの高級車で登庁する谷本知事を、県職員がうやうやしく出迎えるシーンから始まり、東京都民に向けた「無症状の人は石川県にお越しを」という炎上発言シーンが畳みかける。
「お!きたきた!もっと政治家の炎上発言プリーズ!」と思っていたら、なぜか、金沢出身でムスリムに改宗された松井さん一家、バンライファー(定住せずバンで生活する人)の中川さん一家と秋葉さん夫婦など、市井に暮らす一般家庭の人たちの暮らしぶりを追うシーンが続き、お待ちかねの森元や馳が全く出てこない。

 

・・7期28年に渡って石川県政に君臨してきた谷本知事や、石川県はおろか、日本のドンみたいになっている森喜朗など、長く権力トップにある尊大な男社会のハダカの王様ぶりを描き出す映画かと思っていたのに、なんで一般人しか出てこないの?
・・なんかモヤっとした感もあったけど、モスリムの松井さん一家やバンライファーの中川さん一家のキャラクターには一筋縄ではいかない面白味があり、これはこれで興味深いなと感じた。だいたい金沢にモスクがあるとは知らなかったし、松井さんが勤務しているのは金沢でも超老舗の「あめの俵屋」。創業うん百年みたいなバリバリの老舗が、ムスリムの人を従業員として雇用し、しかも勤務中の礼拝も普通に受け入れてる多様性を認める企業だったとは!・・我が地元ながら、ここまで彩り豊かな町だったのかということを、再認識させられた。

 

なお後半では、お待ちかねの谷本、森、馳、三氏の過去の味わい深い映像がてんこ盛りで、当初期待していたこちらの欲望も十分満足させられた。森元首相の「神の国」発言や「無党派層は投票にいかず寝ててほしい」などの過去の名言映像や地元の決起集会の映像など、石川テレビが所有する貴重なアーカイブ映像も堪能できた。
また在職期間31年という異常なまでの長期政権を敷いた、中西陽一元石川県知事が死去した際の霊柩車の葬列が野町の走行するという、貴重な懐かし映像も観れて良かった!

 

そして見事、石川県知事選で当選した馳浩が、大勢の取り巻きを引き連れて谷本知事に引き継ぎの挨拶に来るシーンが印象的。谷本が「大勢で来られて、新たなグループを作られるのかと思った」と思わず漏らしたのを、馳が「そんなことは言わないでください」とマジレスする場面は笑ってしまった。
プチ鹿島さん曰くの「使い勝手がいい体育会系議員」そのままの馳新知事の、なんとも香ばしいナイスシーンだった。

 

 

ちなみに自分の過去の谷本知事に関するエピソード。

むかし香林坊の地下道で、香林坊アトリオから出てきた谷本知事夫妻を見かけた際、「あ!谷本や!」となり、思わずちょっとだけ注視してしまったのだが、谷本知事本人は無表情で歩を進めるも、こちらの視線に気づかれたのか、奥様がこちらに向けて丁寧にお辞儀をされた。「・・全方位に気を使って、県知事の奥様も大変やなー」と思ったもの。
また数年前に実家に帰った際、地元の公民館の館長をしていた父親が谷本知事といっしょに撮った写真が引き伸ばされ、部屋の天井近くに飾られていたのを見て、この世代の人にとっては、県知事様との記念撮影はありがたいものなんだな・・・という感慨と、そもそも公民館の館長なんて、一文の得にもならない役割を「名誉職」として拝領する世代っつうのはなんだかなーと。こういう世代が一掃されない限り、自民党の世も終わらないのかな、としみじみ感じた。

 

 

とにかく本作。
石川県に特化した硬直した自治体や政治家、家族を描いた作品なのかと思っていたが、決して一地方の現状だけでなく、日本全体の問題を浮かび上がらせた作品。観終わった後にジワジワくる作品なので、是非、県外の方にも観てほしい。

 


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それにしても「石川さん」のイラストを久しぶりに見たけど、

 


全国区に問題提起できる良作品を世に出した石川テレビを、地元民として誇らしいと素直に感じた。
もちろん五百旗頭監督の手腕が凄いのはあるんだけど、その感性と無茶ぶりを受け入れる懐の深さが、わが地元のテレビ局にあったというのは素直にうれしいな。

・・なんか、石川テレビありがとう!って言いたいよ。

 

 

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