そもそも勘違いしており、本作はA24(エートゥエンティフォー)の製作だと思ってて、昨年観た『グリーン・ナイト』のような一風変わったクセのある時代劇だと勝手に思ってて興味があったのだけど、全然違っていた。
10世紀の北欧、アイスランドが舞台。叔父に殺された父王の復讐と、叔父に攫われた母の奪還のため、幼い王子がヴァイキングの手下になって腕を磨き、成人してついに復讐を果たす物語。
ストーリーはめっちゃ直球。『コナン・ザ・グレート』みたいなお話。
というか、父王が殺されて逃げ出した時は少女と見紛うばかりにか弱い美少年だったのに、何をどうしたらどうしてこうなる?ってくらい逞し過ぎる成長を遂げ、もうそのまま誰でも殺せるくらいマッチョになってる!
そして、叔父の追っ手からやっとのことで逃れたときは何度も復讐と母の奪還を唱えてたのに、なぜか大人になったら復讐を忘れており、幻のように現れた巫女(ビョーク)に諭されてやっと本来の目的を思い出し、復讐の旅路に・・・てかアンタ、なんのためにそんなマッチョになったんや!?
・・で、ついに叔父のもとに辿り着いて、これだけのマッチョだからすぐに伯父一族を皆殺しにできるのに、なぜか奴隷に身をやつしてジックリと復讐する機会をうかがう・・ってアンタ、そんだけマッチョなんだからすぐに敵を全滅できるだろ!
・・ってことで、ラストの叔父との一騎打ちまでやたら話が長くて、どうやらこの作品、かのシェイクスピアの四大悲劇の一つである『ハムレット』の元ネタになった『デンマーク人の事績』という北欧神話を映画化したそうで、どうりでリアルな中世を再現しつつも戯曲みたいにまどろっこしいストーリー展開になっており、なんとなく中途半端な作品になってしまっていた。
そういえば作品中、主人公が復讐するか平和に生きるかに悩むシーンが何度かあったが、だいたいそんなマッチョなんだから復讐一択やろ!としか思えないのだが、なんか煮え切らないんだよね、この主人公。こんなにマッチョなのに!
「To be or not to be, that is the question.」ってことかと・・
監督のロバート・エガースは、かつて演劇でシェイクスピア作品を演じたこともあり、かつ黒澤明の『乱』などにも影響を受けたそうで、そういった監督の指向が表現された映画っぽくて、中世のリアルさを表現した作品としては『グリー・ナイト』には及ばなかったし、A24がプロデュースするよな作品でもなかった。