okurejeの日記

フィギュアや映画や本などについて、ゆるく書かせていただきます。

『妖怪の孫』 感想

 

『パンケーキを毒見する』と同スタッフが製作した政治ドキュメント。
それにしてもタイトルが・・・

前作の『パンケーキを毒見する』も、どうもセンスがイマイチだと思ったのだけど、今回のは直球過ぎて引いてしまうレベル!

 

しかし内容は前作同様、長期政権ながら問題の多かった安倍政権の、負の遺産を振り返る良ドキュメンタリーだった。
・・ただ、途中で少し眠気を感じてしまったのも事実。
その理由、『パンケーキを毒見する』の場合、なんだかんだでガースー(菅義偉元総理)ってそれほどテレビでよく見てたワケでもないので、改めてガースーの政治活動や負の側面、逆に彼の過去の功績なども紹介されており、単純なガースー批判に終始した作品でもなかったことは公平性も感じたし、知らないことも多かったので、興味深く鑑賞できた。
でも安倍ちゃんの場合、悪事の数々はメディアや書籍などでもお馴染みなので、過去の国会においての発言や負の側面についても見飽きた感があり、真新しさがないぶん、少し退屈に感じてしまったというのはあった。

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また、直近の銃撃事件や統一教会問題についてはあまり深堀されてなかったので、物足りなさも感じたというのもある。
あとガースーの場合は、ネガティブな面ばかりではなく、過去の功績と思える政策も紹介されていて、多少の公平さはあったが、アベちゃんについては悪事しか紹介していなかったので、ちょっと偏り過ぎのような気もしたが・・
・・とはいえアベちゃん政権で何か功績ってあったっけ?

 

ただ、アベちゃんの選挙区である山口県下関市の安倍事務所に、複数回にわたって反社組織から火炎瓶が投げ込まれたという「安倍晋三宅火炎瓶投擲事件」については、まったく知らなかったので、いくら2000年の事件とはいえ、こんなスキャンダラスな事件がメディアで報道されてなかったのには驚いてしまった。これって、ヘタしたら森友や加計よりもヤバくね?

 

またこれは自分の教養不足だが、アベちゃんがしつこくこだわった憲法改正について。
そもそも日本国憲法とは、我々国民を縛るものではなく、為政者を縛るためのもの。
国民が守るのは法律であり、国家権力を制限して国民の人権を保障する法が憲法であるとは、恥ずかしながら今までよくわかっていなかった。戦後GHQから押し付けられた憲法を日本独自の憲法に制定し直したいというのはわからなくもないが、戦争しやすくなるとか、政治家に都合のいい憲法に変えられたらもっと困る。
そういった危険性も本作では訴えられていた。

 

政治ジャーナリストの野上忠興氏のインタビューも面白かった。
ただ、なんでこの方はこんなにアベちゃんについての身も蓋もないことをズケズケ言えるんだろう・・と疑問だったが、野上氏はかつてアベちゃんの父親である安倍晋太郎の番記者だったこともあり、アベちゃんが敬愛する祖父の岸信介とも面識があり、安部家とは親しく話す間柄だったそうだ。
とういことで早速、野上氏の著作『安倍晋三 沈黙の仮面 その血脈と生い立ちの秘密』を読んでみたんだけど、これがすこぶる面白かった・・
実際にアベちゃんにもインタビューし、アベちゃんの養育係だった久保ウメさんへもインタビューされ、生身のアベちゃんを生まれる前から知っている人が書いた著作というだけあって、リアリティはハンパないものを感じた。

 

 

青木理氏の『安倍三代』も興味深く読めて、東京帝国大学法学部政治学科卒、地元で「大津聖人」とも呼ばれた清廉潔白な人格者、アベちゃんの祖父である安倍寛。東京帝国大学法学部在学中に海軍に入隊、特攻隊員として志願するも終戦を迎え、後に政界のプリンスと呼ばれたが次期総理を目前に病死したアベちゃんの実父、安倍晋太郎。そして直系の安倍家の祖父と父よりも、母方の祖父である岸信介を敬愛した成蹊大学法学部卒、確固たる信念のないまま政治家を世襲した三代目、我らが安倍晋三。
安倍三代の歴史的な流れを理解するのに良いテキストではあったが、晋太郎と晋三のリアルな人間性を体感できて面白かったのは『安倍晋三 沈黙の仮面 その血脈と生い立ちの秘密』に軍配を上げるしかないだろう。

本書のなかで、アベちゃんは憲法改正は無理と判断した後、解釈憲法とうい手法を用いて集団的自衛権の行使を容認するなど、より悪辣なやり口で権力を行使したことを批判していたのが印象的だった。

 

安倍三代

安倍三代

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政治ドキュメンタリーとしては、先日鑑賞した『劇場版 センキョナンデス』のほうが、選挙をエンターテインメントとして楽しむことで逆に現代の政治不信、無関心から政治に興味を持つキッカケになり得るような作品だと思ったが、本作の直球のテーマも必要であるし、やはり多くの人に鑑賞してもらいたいと思う。

 

 

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