『キル・ビル』シリーズでユマ・サーマンが、精神的にも肉体的にも受けたダメージを考えたら、以降のクエンティン・タランティーノ監督作品を手放しで喜んで鑑賞することに引っ掛かりを感じざるを得ない。
ハーヴェイ・ワインスタインを父とも思っていた、という人でもあるし。
・・しかし、初めて劇場で観た『レザボア・ドッグス』は、やっぱり面白かった。名作だった。
アメリカン任侠。
緊迫するシーンの連続。スリリングでハードボイルドなクライム・フィルムでありながら、オヤジ達がダラダラとくだらないバカ話に興じるユルいシーンで緩急をつける見事な演出、カッコよすぎるサウンドトラック。
義理と人情を重んじる、昔ながらのジャパニーズ任侠のようなミスター・ホワイトを演じるハーヴェイ・カイテル。でも顔が怖い。
ミスター・ブロンドを演じたマイケル・マドセンを本作で初めて知ったが、この映画のせいで、マドセンはスクリーン外でも絶対に堅気の人間に思えなくなった。顔が悪人過ぎる!
・・てか、撮影当時のマドセンはまだ20代だったんだよ!
次作の『パルプ・フィクション』と本作を超えるほど斬新な映画作品は、今のところまだ観たことがないと思えるほど、エポックメーキングな作品だと思う。
なんだかんだでタランティーノ作品は90年代の初期3部作が一番シンプルで粗削りで面白いなと満足しながら帰ろうとしたら、背後の20代くらいの二人の若者から「相変わらずタランティーノ作品はわかり辛いなー。ラストの撃ち合いなんて誰が誰を撃ったかわからなかった」
・・という感想が聞こえてきた。
え!タランティーノ作品がわかりにくい?
読解力ないかよ!これだから、ゆとり世代は!(・・というか、ゆとり世代でもなく、おそらくZ世代)
と反射的に思ってしまったが・・・
・・後で調べたら、確かにラストの3人の撃ち合いはおかしい。
なんとなく、3人がそれぞれの相手を撃って相撃ちになったのかと思っていたのだが・・・
そもそもジョーは、地面に横たわっているティム・ロス演じるミスター・オレンジに最初に銃口を向けていた。
それに納得いかないハーヴェイ・カイテル=ミスター・ホワイトは、ジョーに銃口を向ける。
そして、ジョーの息子ナイスガイ・エディがミスター・ホワイトに銃口を向けるので、同時に銃を撃ったら、ナイスガイ・エディは撃たれないことになるが・・それぞれ1発の銃弾で、3人とも同時に倒れている・・
ミスター・オレンジは瀕死の重傷で横たわっており、銃弾も撃ち尽くしているので、彼がナイスガイ・エディを撃つことは不可能・・
いや実は、ナイスガイ・エディに撃たれたミスター・ホワイトが体を反転させて、2発目でナイスガイ・エディを撃つ設定だったらしいが、ナイスガイ・エディの衣装に仕込まれた火薬が早めに暴発してしまい、低予算で撮り直しができなかったので、そのままカットされなかった・・というのが真相らしい。
とすると、過去に何度も観てるにも関わらず、適当に鑑賞していたのはこちらで、彼らの方が精緻に鑑賞していたことになる。・・まったくゴメンやで!
・・・いやー我ながら老害になったなーと反省してしまった!