okurejeの日記

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『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』 感想

 

何と言ってもミラマックスは『パルプ・フィクション』を世に出すという歴史に残る偉業を成した配給会社であり、クエンティン・タランティーノの盟友ハーヴェイ・ワインスタインはその創業者である。
なので当時、ワインスタインの性暴力事件のニュースはショッキングだったし、長年見て見ぬふりをしてきた、大好きな監督であるタランティーノにさえ不信感を感じたものだ。
・・いまでもQTに対してのネガティブなイメージは消えていない。ユマ・サーマンに衝突事故を起こさせた張本人でもあるし。

 

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ただ、#MeToo運動が世界的に広がるきっかけとなった歴史的な事件でありながら、ワインスタインの性加害がスクープされた経緯など、他国のニュースなのであまり詳細は知らなかった。
かつ、当のハリウッド映画業界自体がこの事件を映画化したということにも大いに興味をそそられ、公開前から本作については観たいと思っていた。

 

本作は、ニューヨーク・タイムズのミーガン・トゥーイとジョディ・カンターという二人の調査報道記者が、業界では公然の秘密であった映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの何十年にもわたる性暴力事件を、沈黙を強いられた被害者や関係者を丹念に取材し、気の遠くなるような情報収集や証拠固めを行って、ついに2017年、記事を公開するまでを描いた、ジャーナリストの実話を映画化した作品。

 

2人のジャーナリストが政府の極秘情報を暴露する実話を映画化した作品では、2017年のスティーヴン・スピルバーグ監督作『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を思い出す。この作品も大いに見応えがあったが、本作『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』も、単なる原作の映画化にとどまらず、被害者の苦悩や記者の苦労がひしひしと伝わってくるような、ラストでは、思わずもらい泣きするほど、なんとも心に残る作品だった。
なお『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』はワシントン・ポストの記者の物語で、ニューヨーク・タイムズがライバル的に描かれていたが、『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』では、ワシントン・ポストとスクープ合戦を繰り広げていた点も臨場感があって面白かった。

 

それにしても、本作で改めてハーヴェイ・ワインスタインの悪辣ぶりをこれでもか!と再認識したが、劇中では、元ミラマックスの中国系の女性スタッフが、ワインスタインの性加害によるショックで自殺を考えるシーンがあった。
・・男性の身で考えると、性加害によって女性がどれほどの精神的ダメージを受けるのか、正直想像できないというか、自殺まで考えるってちょっと大袈裟では?・・不謹慎ではあるがそう思ってしまったのだけど、鑑賞後に、陸上自衛隊で性暴力を受けて、単独で告発した五ノ井(ごのい)里奈さんも、一時は自殺まで考えたこともある、という告白記事を読んで、自分自身の認識の甘さに恥じ入ってしまった。
男性の性加害のせいで女性の尊厳がどれほど傷付けられるのか。本当に真剣に考えないといけない。
なお、本作にも映像が出ていた、女優ローズ・マッゴーワンの元マネージャーがワインスタイン問題を苦に自殺したという事実もあり、ワインスタインは、本当に多くの女性の人生をズタボロにした。
2020年にワインスタインには禁固23年が言い渡されたが、いや、お前は死ぬまで娑婆に出てくんな!と心から思う。

ジョディ・カンターを演じたゾーイ・カザンと、ミーガン・トゥーイ役のキャリー・マリガン、どちらもいい演技をしてたけど、キャリー・マリガンは、『プロミシング・ヤング・ウーマン』は作品自体がダメダメ過ぎていい印象がなかったけど、この作品では役柄にピッタリで、とっても好印象だった。

 


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この事件をきっかけとした #MeToo運動から、特に職場などのコンプライアンスはかなり厳しくなって、世界はとても良くなったと思うけど、日本では未だに、アベ友の山口敬之氏による伊藤詩織さんの性加害についてはスルーされたままだ。
ワインスタイン報道から5年経って、事件も忘れかけてきたタイミングでこの映画が上映されることで、新たにワインスタインの悪行を世界が思い出すいい機会になればいいと思うし、日本国内でも、ありえない暴言を吐いてたアベ友の皆さんへの糾弾もますます進んで欲しいと思う。

 

 

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