okurejeの日記

フィギュアや映画や本などについて、ゆるく書かせていただきます。

『オッペンハイマー』 感想

 

オッペンハイマーがどんな人かもほぼ知らなかったし、一口に「核兵器」といっても、核分裂を利用した「原子爆弾」と、核融合を利用した「水素爆弾」の2種類があることも明確に知らなかった。
そもそも、我が日本は世界唯一の被爆国であるというのに、戦後世代ということもあり、核兵器の恐怖が骨身に染みていない。
そんな了見の人間が鑑賞しての感想なんですが・・・

 

2006年ピュリッツァー賞受賞作である評伝を原作に、クリストファー・ノーラン監督がオッペンハイマーの半生を描いた本作。
・・もちろん原作も未読のため、まっさら過ぎる状態で観た感想としては、まず本作、時系列がバラバラで描かれているため、なかなかストーリーが把握できず、正直前半までは眠くなってしまった。
あと鑑賞後に知ったが、オッペンハイマー視点でのストーリーはカラー映像だが、オッペンハイマーの視点外でのシーンはモノクロだったそうで、そんな事情も知らずに観たので、なぜモノクロなのかもよくわからず、少し混乱もした。

しかし物語が青年期からマンハッタン計画に誘われるまでは眠気に襲われたが、マンハッタン計画における人類最初の核実験である「トリニティ実験」のシーンからは、俄然、眠気が吹き飛んだ。
そうそう!核兵器が観たかったんだよ!的な。

・・もしかして「大気が発火して地球全体が焼き尽くされる」という熱核暴走が起こるかも・・という小さな不安を抱きつつ、実験は無事成功。
さぁ原爆を広島、長崎に落とすぞ!・・というシーンは流されて、とりあえずオッペンハイマーも無事に「原爆の父」になったところでチャンチャン!で終わるのかと思ったが・・
ここまでが物語の前半だった。


後半は、水爆実験に反対したためにレッド・パージされるまでの顛末を、公聴会のシーンを中心にじっくり描いており、むしろマンハッタン計画の話よりも、こちらのほうが見応えがあったかもしれない。
いわゆる「オッペンハイマー事件」といわれる、オッペンハイマーが共産主義者としてスパイ容疑を疑われ公職追放された事件についても知らなかったので、「原爆の父」とまで言われた人物が、冷戦時代にこんな目にあっていたという事実に驚いた。

・・驚いたといえば、次々と有名俳優が登場する本作ではあるが、またまた超売れっ子のフローレンス・ピューも出演してて、なかなか大胆なベッド・シーンを演じていたのでビックリ。
『哀れなるものたち』のエマ・ストーンにも驚いたが、フローレンス・ピューといえば20代のハリウッド女優の中でもトップクラスにまで登りつめているのに、作品のためならヌード・シーンも辞さない、という、いかにもフローレンス・ピューらしい気性が伺えて尊敬した。

 

それにしてもなぜ日本では公開が遅れたのか。
とりあえずは広島・長崎への原爆投下と両都市の惨状は映像で描かれるかと思っていたが、「トリニティ実験」を成功裡に終えて、実戦での原爆投下スケジュール情報をロスアラモスで待ち構えていたオッペンハイマーに、「ああ、原爆ならこの前投下しちゃったよー」と、「桐島、部活やめるってよ」くらいの気軽さで事後報告されるという軽いノリで流されてしまった。
・・これはこれで、拍子抜けながらも、逆に原爆投下の恐怖をリアルに表現していると思ったが、ビジュアルで原爆投下後の悲惨さを伝えない作品に対して、日本では非難されることを危惧したんだろうか。

ただ本作から、なぜオッペンハイマーが戦後、原爆を投下したことに罪悪感を感じ、核軍縮を呼びかけるまでに心情が変化したのか、明確な理由を読み取ることができなかった。
本作はあくまでオッペンハイマーの半生を描いた映画で、反戦や反核がメイン・テーマではないので、そこはあまり深堀しなくてもいいのかもしれないが、マンハッタン計画では精力的に、ともすると嬉々として原爆開発に取り組んでおり、原爆投下で多くの人民が死んでいくことも承知のうえだったのに、いざ目的を達したら、なぜ手のひらを返すように核兵器反対派になったのか・・
天才科学者は常人とは絶対的に思考形態が違うので、凡人には推し量れないと思うが、なんとなくオッペンハイマーのような科学者が、感傷的な理由で、それが大量破壊兵器とはいえ、科学技術の進化を止めようと考えるものなんだろうか。

 

クリストファー・ノーラン監督作品らしく、1回の鑑賞ではなかなか理解しづらかったが、思ったより物理学や量子力学などの科学技術に関する用語や描写は少なかったので、その点ではわかりやすい作品だったかもしれない・・が、やはり演出も独特だったので、もう1回くらいは観ないといけないかも・・

 

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