okurejeの日記

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『ロスト・キング 500年越しの運命』 感想

 

英国史についてはサッパリで、恥ずかしながら、リチャード三世っていつの時代の王様なの?・・てか、そもそも王様だったの?くらいの有様で・・

 

本作は、シングルのワーキングマザーが、長らく所在が不明だった、15世紀のイングランド王・リチャード三世の遺骨をほぼ独力で探し当てるまでを描いた、実話をベースとした作品。

 

14世紀から15世紀までのヨーロッパ史はとにかく複雑で、様々な王国が入り乱れて理解が追い付かないのだけど、フランス王国とイングランド王国や、その他の国が争った「百年戦争」の後、イングランド国内で起きた「薔薇戦争」の「ボズワースの戦い」で戦死した、最後のイングランド王と言われるリチャード三世。
そのヨーク朝のリチャード三世を破ったヘンリー七世が創立したテューダー朝は、自身の王朝の正当性を高めるために、必要以上にリチャード三世を悪し様に罵って、後々までに悪評を広めたと言われている。
その悪評を決定づけたのが、ウィリアム・シェイクスピアの史劇『リチャード三世の悲劇』で、王位を簒奪するために自身の幼い二人の甥を殺した、容姿も醜い冷酷な王というキャラクターが全世界に長らく印象付けられたそうである。

しかし、そんなリチャード三世を擁護し、彼の名誉回復のための活動をしている「リチャード三世協会 (Richard III Society)」なる、百年以上の歴史を持つ組織があるそうで、なんと日本にも支部があるとのこと。彼らは「リカーディアン」と名乗り、本作の主人公であるフィリッパ・ラングレーは、リチャード三世協会のスコットランド支部長だそうである。

 

フィリッパ・ラングレーを演じたのは、『シェイプ・オブ・ウォーター』や『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』でも主役を演じた、幸薄そうで弱々しそうだけど、腹に一物ありそうとういか・・芯は強そうなヒロインを演じさせたらこの人の右に出る者はいないだろう、サリー・ホーキンス。

映画にもチラッと本人の映像があったが、実際のフィリッパ・ラングレーさんの画像や映像を拝見すると、割とたくましく見える。
作品内では「筋痛性脳脊髄炎」という大変な持病を抱えながら、単独で遺骨探しに奔走する主人公像が印象的だったが、実際はどうだったんだろうか。
少なくとも物語は実際の話よりも結構、脚色されていると思われる。


まず物語では、主人公の前に幻想のリチャード三世が何度も現れ、しまいには会話もするが、実際のフィリッパ・ラングレーさんのコメントでは、さすがにそれは演出だったとのこと。
また作品内では、主人公は仕事上で評価されないのは持病持ちのせいで、たまたま息子と観劇したシェイクスピアの『リチャード三世の悲劇』の舞台を見て、会社に正しく評価されない自分と、後世まで悪評を得て、正当な評価を得られなかったリチャード三世を重ね合わせて、次第にリチャード三世に興味を持ち調べ始めて、それがキッカケでリチャード三世協会の協会員になったという流れになっていたが、実際は、そもそも昔からの歴史マニアで、自分の置かれた境遇とか関係なく、リチャード三世推しだったため協会員になり、活動するうちに遺骨探しプロジェクトの中心メンバーになった、というのが実情ではないだろうか。(推測だけど)

 

あと、ラスト近く。
当初は発掘資金などの援助も約束していたレスター大学が、曖昧な計画を危惧してか、途中から資金援助は出来ないと通告してくる。フィリッパ・ラングレーは、やむなくリチャード三世協会員などに援助を依頼、なんとか資金調達し発掘作業の実現に漕ぎつけたが、リチャード三世の遺骨が発見されるや、その功績をレスター大学が独占する形になり、観ている観客もキーッとなったが、物語は、そんなレスター大学をギャフン!と言わせるようなオチを付けないまま終わってしまったため、なんとなくモヤっとしてしまった。
どうせ半分はファンタジーなお話にしたんだから、ラストはもう少しスッキリするような脚本にすればいいのに・・・とは思ったが、まぁそれでも、サリー・ホーキンスの好演のお陰で楽しく鑑賞できた。

 


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なにより、いくら埋葬場所がある程度想定できても、それでもピンポイントで遺骨を発見できたのは、砂浜で針を探すくらい奇跡に近いと思うので、そんな奇跡の実話を知れただけでも観た甲斐のある作品だった!

 

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