スパイダーマン映画史上最高傑作とまで言われ、アカデミー賞まで受賞した本作。
正直、アニメ作品を劇場で観ることに抵抗があったんだけど、これほどまでの高評価なら観ておくか・・ということで。
主人公は黒人の少年で、ある日、不思議な蜘蛛に噛まれてスパイダー能力を得るが、急に身に付いたその特殊能力にとまどっている最中、犯罪王キングピンが引き起こした事件に巻き込まれ、キングピンに殺されたスパイダーマン=ピーター・パーカーの意思を引き継ぐ決心をする。そして、キングピンがある目的で作動させた加速器が動作したため別次元から現れた5人のスパイダーマン達とともに、キングピンの目的を阻止するために闘うことを決意する。
別次元のスパイダーマン達はそれぞれタッチが違っており、ノワール・アニメ風やジャパニーズ・アニメ風、カトゥーン調など、全くバラバラなビジュアルイメージのキャラクターを1つの作品の中で表現する手法は確かに斬新で、とてもポップな色調だった。
ただアニメーション表現としては、昨今のディズニーやピクサーなどの作品と比べても、それほど革新的な印象は受けなかった。
またストーリーについても、最初にスパイダーマンが殺されてしまうのは驚きだったが、以降の流れはまぁまぁ予定調和で、それほど斬新な脚本とも思えなかった。
なお本作では、敵であるキングピンがどんな背景を背負ったキャラクターなのか殆ど説明がないため、一見、タダの太った普通のオッサンにしか見えないキャラが、なぜスパイダーマンを殺せるほど能力を持っているのか、原作を知らない自分にはよく理解できなかった。
他の別次元のスパイダーマンについても、5人のうちピーター・B・パーカーとグウェン・ステイシーについてはそれなりに背景説明があったが、他の3人はサラッとしか説明がないためモブキャラにしか思えず、その他の登場人物についても、あまり感情移入ができなかった。
おそらく、アメコミに慣れ親しんだネイティブであれば、コミックの世界観とお馴染みのキャラクター達がそのままクオリティの高いアニメーションで表現された本作を純粋に楽しめるのかもしれないが、主人公のマイルス・モラレスやヴィランのキングピンすら知らなかった自分には、イマイチ作品自体にのめり込むことが出来なかった。
1部のマーベル作品愛好者は別として、一般的な日本の観客には、本作はそういった意味であまり訴求しないのではないだろうか?
なお妻は本作を観て、途中で角川映画版の『幻魔大戦』を思い出したそうだ。
『幻魔大戦』では、ヒロインが強大な敵である幻魔大王を倒すため、世界中から強い超能力を持つ仲間を集めるが、主人公である東丈(あずまじょう)は、実は他の仲間以上に強い能力を持っているにも関わらず、能力が発現するまでは正義感は強いがむしろ非力で、覚醒するまでに長い葛藤があるのだが、確かに言われてみれば『スパイダーマン: スパイダーバース』でも、主人公が覚醒してスパイダーマンとしての能力を発揮するまでの葛藤がテーマのひとつになっていて、類似点は多い気がする。
ただ妻の、本作は『幻魔大戦』をパクったに違いない、という主張にまでは同意できなかったが。
ということで、スパイダーマン実写映画の供給過多状態で、久しぶりに新鮮なスパイダー作品に出会えるかと期待したけど、やはり期待外れだった。ソニー・ピクチャーズのスパイディ・スピンオフ作品は、1作目の『ヴェノム』同様、どうもイマイチだな。
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