okurejeの日記

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『私のはなし 部落のはなし』 感想

 

渋谷のユーロスペースにて、満若勇咲(みつわかゆうさく)監督作品『私のはなし 部落のはなし』を観た。

この手のミニシアター上映作品は大々的な宣伝は少ないとは思うが、本作については通常のインディーズ作品のなかでも、とりわけプロモーションが少なかったのか、上映されてからも作品の存在に気が付かず、危うく観損なうところだった。

重い題材でもあり、しかも上映時間が205分(3時間25分)という長編のためハードルが高い作品ではあるのだが、これはやはり観るべき作品だと感じた。

 

今なお根強く残る部落差別問題について、異なった年代の当事者たちが思いを語り合り、かつ識者の解説などで部落問題の歴史を振り返るという構成になっている。
・・ただ、さすがに3時間強の鑑賞は疲れるのだが、途中10分間の休憩があるので、その間に腰を伸ばすとよいでしょう。

 

部落問題については、地域によっては学校で人権教育があるだろう。
でも、そのような自治体は限られているので、自ら求めて知識を得ないと、全く知らないという人も多いと思う。
自分も最低限の知識しか無かったので、この作品を観ることで初めて知ったことも多かった。
なにより、若者世代でも未だに自身のアイデンティティに悩んでいる人も多いんだ、ということを知ることができた。

 

そもそも部落差別というのは全くの共同幻想で、差別者と被差別者に生物学的な差異なんてない。単に、古くから差別された地域に住んでいた、というだけで忌避されてきただけで、本当にフェイク。
現代において部落差別なんてナンセンス以外の何物でもないのだけど、本作で差別者側としてインタビューされていたオバちゃんは「(彼らと我々は)血筋が違うんでしょうね・・」と言っていた。
そら、ご先祖が~、お墓が~、神様仏様が~とか言ってる、頭カッチカチの昭和世代は理性的な判断なんて出来ないんだから、こんなジジババが絶滅すれば部落差別も激減するんだろうけど、まだまだ今の70代、80代は元気なので、暗黒時代はまだ続くかもしれない。ジジババはよ涅槃に行け!

 

また本作で初めて知ったのが「鳥取ループ裁判」問題だった。
この作品が凄いのは、「鳥取ループ」こと宮部龍彦氏が「部落探訪」と称して、各地の部落に訪れて建造物などを撮影する行動に同行し、インタビューしていること。運転中の宮部氏に満若監督が「部落の撮影って盗撮ですよね?」と聞くと、間髪入れずに「あんたに言われたくない!」と返されていたシーンが印象的だった。宮部氏については、本作ではフラットな立場の人ではなく、やはりネガティブなイメージで描かれてはいたが、このセリフをカットしなかった満若監督は、正直な人だなと感じた。
満若監督は学生時代の2007年に、関西の食肉センター(屠場)を取材・撮影した『にくのひと』という作品を製作したが、団体から抗議されて劇場公開を断念したという経験があるという。
・・同じような作品で、2013年に公開された纐纈(はなぶさ)あや監督作品『ある精肉店のはなし』については、滞りなく劇場公開されている。
タイミングや作風などが違って、両者には明暗が生じてしまったが、『ある精肉店のはなし』は素晴らしい作品だったし、『にくのひと』もきっといい作品だったに違いない。

 


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部落問題なんて未だにセンシティブ過ぎて、軽はずみに思ったことも口にできないんだけど、とにかく本作は観終わってから色々と考えさせられるし、知りたくなることも増える力作。みんななんで観に行かないのか不思議。

 

 

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