okurejeの日記

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『正義の行方』 感想

 

ゴールデンウイークは旅行の予定もないので劇場で映画でも観ようと思っていたが、ハリウッドのコング×ゴジラとマンガ(コナン)しかやってねぇ!
・・しょうがないのでユーロスペースで上映されている『正義の行方』という、飯塚事件を扱ったドキュメンタリー作品を観に行ったんだけど、これがなかなかに衝撃的作品だった。

 

 

そもそも「飯塚事件」を知らなかった。
なんなら「東池袋自動車暴走死傷事故」かと思ったくらいで・・

「飯塚事件」とは、1992年に福岡県飯塚市にて発生した幼児強姦殺人事件で、通学途中の小学1年生の女児2名が失踪、翌日、遺体となって発見。2年後に逮捕・起訴された久間 三千年(くま みちとし)は無罪を主張したが2006年に死刑が確定し、なんと2年後の2008年に刑が執行されたという。
本作はこの事件の関係者(加害者側の遺族と弁護士、警察関係者、新聞記者)へのインタビューで構成されるドキュメンタリーで、2022年にNHK・BSで放送されたドキュメンタリー番組を映画化した作品とのことだ。

正直なところ、前半までは眠気に襲われた。
既に犯人とされた男は死刑執行されてこの世にいないワケだし、今更、証拠が不十分と騒いでも後の祭りだろうし、インタビュー内容も当時の状況や心境を語っているだけなので、ちょっと退屈に感じてしまった。
しかしこの事件、死刑執行後に弁護団から再審請求が行われたという事実と、事件当時には犯人逮捕をセンセーショナルに報道した西日本新聞の記者が、この事件に冤罪の可能性が無かったのか再検証する記事を連載したとのことで、後半からはその過程がエキサイティングに語られる段となって、俄然、メガシャキしてしまった。

死刑判決が出たいくつかの判決理由のなかで、DNA判定結果と目撃証言が重きを占めたらしいが、当時のDNA判定、「MCT118鑑定」はDNA判定の初期の方式で非常に信頼性が低く、全く同じ方式で有罪となった「足利事件」ではDNA再鑑定によって無罪が確定された。
当時、DNA鑑定を広く推進しようとした國松孝次・元警察庁長官が、飯塚事件でのDNA判定の不確実性の事実を封印しようとしたのでは?という疑惑も語られていた。
また、目撃証言も警察の恣意的な誘導によって歪められた可能性が非常に高いと思わざるを得ないような疑惑も、弁護団が主張している。

 

劇中、世界的に裁判所で飾られてる「正義を司る女神テミスの像」だが、欧米では目隠しをされた像が一般的だが、日本の裁判所では目隠しをしていない像が多いという。
目隠しを付けた像は、「見るべきでないものを見ない」ことを象徴しており、裁かれる側の人種やビジュアルで刑を判断しないことを意味しているが、目隠しを外した像は、「見るべきものを見る」ことによって、何を見ても判断を誤らないことを意味しているそうだが、日本の司法ではそうなっていないのではないか?見ることによって、国家権力に忖度しているのではないか?と、暗に語っているように感じた。
‥確かに今の自民党政権では、立法権も行政権も自民党が歪(いびつ)に捻じ曲げてしまっており、司法権すらコントロールしているようにしか思えない。

 

 

 

犯人とされた久間三千年が冤罪だったのかどうかは不明だが、とにもかくにも「疑わしきは罰せず」という大前提は守られるべきだと考えるし、第1次再審請求審では棄却されたが、2021年に出された第2次再審請求の結果は、大いに見守るべきだと思った。

 


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・・ただ鑑賞後にネットで本事件を調べたんだけど、なんか久間三千年も怪しいのは確かなんだよね・・
犯行に使われたという車両を売る前に、座席を外してホースで水洗いしたとか、出血の話とか。
グレーなのは間違いないなという印象で、当時の警察関係者が、久間犯行説で突っ走ったのもしょうがない気が。
何れにせよ、色々と考えさせられる作品であることには間違いなく、これは観るべきドキュメンタリー。

 

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