okurejeの日記

フィギュアや映画や本などについて、ゆるく書かせていただきます。

『福田村事件』 感想

 

そう言えば関東大震災って、魔人・加藤保憲が龍脈を操作して関東に引き起こした大地震だったな、くらいの知識しか無かった。
今年は関東大震災から100年目だそうだが、考えてみたらこの大厄災についてはあまりよく知らなかった。
甘粕事件など、震災のどさくさでアナキストが憲兵に殺された事件については多少は関連本も読んだが、朝鮮人が多数虐殺された事件については殆ど知識がなく、「福田村事件」についても、恥ずかしながら本作で初めて知ったくらいだ。
朝鮮人が当時どれだけ殺されたのかもよく知らなかった。せいぜい数十名から数百名(・・それでも多すぎるんだけど・・)なのかと漠然と思っていた・・が、正確な被害者数は明らかではないらしいが、6,000名にも及ぶとの説もある。というか、犠牲者の多数に関係なく、完全なる日本人によるジェノサイドだろう。

 

 

驚いたのは、朝鮮人が虐殺されたのは東京都(当時、東京府)だけかと思っていたが、神奈川や千葉など、それほど震災被害が大きくなかった関東圏全域でもデマによる朝鮮人虐殺が発生していたという事実で、「福田村事件」も、千葉県での出来事だったことも全く知らなかった。

『A』、『A2』、『i-新聞記者ドキュメント-』など、ドキュメンタリー映画で知られる森達也監督が、千葉県のとある村で実際に起きた事件をベースに、劇映画として撮ったフィクション作品である。
本作を観てまたまた驚いたのが、「福田村事件」で村民から虐殺されたのが、朝鮮人ではなく、たまたま当地に行商で訪れていた香川県の薬売り行商人15名のうち9名だったということ。しかも彼らは被差別部落出身者であったということで、本当にやり切れないというか、とにかくややこしい事件で、長く闇に葬られていたというのもうなづける。
事実として伝わっているのは、関東大震災後の混乱収まらない9月6日に、千葉県東葛飾郡福田村に行商で訪れていた香川県からの薬の行商団が、地元の船頭(劇中では東出昌大が演じていた)とちょっとした言い争いをしたのがキッカケとなり現地住民がパニック状態になり、自警団などが竹槍や銃などで15名の行商人のうち9名を殺害、殺害後に彼らが朝鮮人ではないと判明した、というのみ。
この話に、朝鮮から帰ってきた夫婦(井浦新と田中麗奈)や村人、現地新聞記者など架空の登場人物を配して、なぜこのような凄惨な事件が発生してしまったのか、濃密なドラマとして再現してみた作品となっている。

 

・・なんか田中麗奈の濡れ場を初めて観たのでドキドキしてしまったが、本作で思わず泣けてしまったのは、自分たちも同じ日本人から差別されて生きている、永山瑛太が演じる薬売り行商人のリーダーが、朝鮮の民族衣装を着た朝鮮人少女から路上で「朝鮮飴」を買ってあげるシーン。
その前に、ハンセン病者に薬を売りつけ、「自分たちみたいなのは弱者から吸い上げるしか生きていけない」と嘯くシーンがあり、そう言いながらも、その直後にハンセン病者のお遍路さんに、「せめてもの罪滅ぼしだ」と言って喜捨をするシーンから繋がっていく「朝鮮飴」購入のシーンは、とにかく日本人が虐げ続けていた人々が、細々と連帯している様が伝わってきて、感動してしまった。
正直、コムアイみたいな現代的な美女や、東出昌大みたいなイケメンが大正時代の村人にいるわけねぇだろ!と思うし、ましてや永山瑛太が最下層の行商人の役っていうのも現実的ではないんだけど、永山瑛太の演技からは、虐げられた者の怒りがひしひしとスクリーンから伝わってきたて、凄く良かった。
東出クンも、お前は劇中でもまた不倫しとるんかい!といった役柄だったけど、キーパーソンでもあり、いい演技をされていたと思う。

 

 

鑑賞後のトークショーもとても良かった。

当日のトークショーは、劇中で村人役を演じられた俳優さん5名が登壇されていたが、ハッキリ言って、メインの役者さんのトークショーより、脇を固める役者さんが、それぞれどんな思いで、どんな役作りをしながら演技されていたのか語られるお話を聞ける方が、より深く作品を味わえた気がする。

とにかく、在日朝鮮人、ハンセン病患者、被差別部落出身者という、日本で触れてはいけない3大タブーの存在を一同に会した映画も、今までありそうでなかったような気がする。そういう意味でも観るべき作品ではないだろうか。

あ、あと、ゆり子はどうして、朝鮮人虐殺慰霊式典への追悼文を送るの止めちゃったんだっけ?

 

video.mainichi.jp


自虐史観とかともかく、過去に日本人が他国人を虐げてきた歴史はちゃんと反省しないといけないんでないの?

 


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