okurejeの日記

フィギュアや映画や本などについて、ゆるく書かせていただきます。

『蛇の道』 感想

 

1998年製作の『蛇の道』は黒沢清監督の初期作品の中でも、同年に制作された『蜘蛛の瞳』と並んで好きな作品。

哀川翔が演じる塾講師・新島は、娘を暴行殺人で失った宮下(香川照之)に協力し、殺人犯と思われる暴力団組織のメンバーを次々と廃工場に拉致監禁し、拷問まがいの尋問で口を割らそうとする。
しかし新島が宮下になぜ協力しているのかの、理由はわからない。

拉致してきた男たちに、宮下が娘の8ミリフィルムを見せながら繰り返し語るセリフが恐ろしい・・

「宮下絵美、八歳。日野市程久保付近の草むらにて遺体発見。死後約⼀週間経過。
全身に⼀六箇所の刺し傷。右手小指、左手中指を損傷。いずれも生活反応あり。
外陰部および膣部に著しい裂創、表皮剥奪、皮下出血無数。生活反応あり。
死に至るまで長時間の拷問・凌辱を受けたと推定される。
直接の死因、数回にわたる頭部への打撲。脳髄は三分の二を損失。
顔は原形をとどめず、歯型より本人と確認する・・・」

こんな、不条理でホラーまがいのクライム作品を、黒沢清監督がセルフリメイクするという。
しかも、哀川翔が演じた役柄を柴咲コウが、香川照之が演じた役柄をフランス人俳優(ダミアン・ボナール)が演じ、舞台もフランスだという・・

そんなん絶対、面白くなさそう!

 

 

・・ということで観てきました。

哀川翔が演じた新島を、本作では、すっかり円熟俳優となった柴咲コウが貫禄の演技で演じていて見応えはある。フランス語も見事だった。

・・ただオリジナル版と違って本作は完全にシリアス調で、クセの強いオリジナル版キャストとの違いが鮮明になっていた。

オリジナル版、若き日の香川照之は狂っているし、哀川翔は完全にワケがわからない。
拉致された暴力団組織の2人を演じる下元史朗と柳ユーレイも、強面ながらどこか情けなくてユーモラスな、完全に「いいキャラ」立ちをしてて、バイオレンス作品なのに、なんかクスっと笑ってしまう独特な間が漂う。そしてラストに「コメットさん」なんていう破壊的なキャラクターが出てきた日にゃ、もう脱帽。「へへー、ゴメンなさい、わたしが悪うございました」とひれ伏すのみである。
それでいて、それとなくアートな作風。
同じ90年代にイケイケだった当時の三池<粗製乱造>崇史作品が今に残らず、黒沢清監督作品は今でも色褪せない理由はそこにある。

柴咲コウは頑張ってたんだけど、やっぱりオリジナル版は超えられなかったな、というのが本作の感想。


・・あ、あと、今の今までずっと「じゃのみち」だと思ってたんだけど、「へびのみち」だったんだ!
DVDも持ってるのに25年間まったく何やってたんだ自分!

 

蛇の道

蛇の道

  • 哀川翔
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