先週の『椿三十郎』に引き続いて、「午前十時の映画祭9」で『用心棒』を観てきた。
順番としては『椿三十郎』が『用心棒』の続編にあたるが、古いモノクロ時代劇を単なる偏見で敬遠している妻に黒澤映画の面白さをわからせるには、まずは『椿三十郎』を観せたほうが話が早い。
『椿三十郎』は山本周五郎の『日日平安』をベースとしており、人情味があってコメディ要素も強いホームドラマ的な時代劇なので、女性でも取っつきやすい作品といえる。
翻って『用心棒』は、ハードボイルド小説の草分け的存在であるダシール・ハメットの『血の収穫』を翻案としているそうで、そこそこ殺伐としたお話である。
対立するヤクザ二大勢力の抗争で廃れ果てた宿場町にある日、一人の素浪人がふらりとやってくる。
「桑畑三十郎」と名乗るその浪人は飄々としながらも、知恵と凄腕の剣術を駆使して、まんまと町に巣くう悪人を根絶やしにするというストーリー。
『椿三十郎』では、入江たか子演ずる城代家老の奥方や団令子演ずるその娘が、殺伐とした中にも女性らしい柔らかでのんびりしたキャラクターで作品に潤いを与えていたが、対して『用心棒』の数少ない女性キャストは、鉄火で腹黒いヤクザの女房役を、大女優・山田五十鈴先生が荒々しく演じて、殺伐とした作品をさらに殺伐とさせてくれた。
このように、なかなか男臭い作品ではあったが、妻も『椿三十郎』ほどではないにしても楽しく鑑賞できたようだ。
さすがに『椿三十郎』のように、思わず泣いてまう要素はほぼ無いけど、たまに挟む主人公の人情味のある行動は作品に潤いを与えている。
さすが世界のクロサワ。
しっかしまぁ、こんな半世紀近くも前の作品なのに、なんで今でも楽しめるんだろう?
シンプルでわかりやすいストーリーと演出なので取っつきがいいってのがあるけど、とにかく各キャラクターが本当に立っている。
モノクロなので余計にビジュアルが際立って見えるからかもしれない。
特にこの「羅生門綱五郎」!初めて本作を観たときはブッ飛んでしまった。
現代はもはや、このビジュアルのキャスティングは無理なんじゃないだろうか。さすが昭和。
なおWikipediaによると、俳優や監督や造形家など多彩なキャリアを持った大橋史典が作製した、斬り落とされた手首の造形があまりにリアル過ぎて、黒澤監督が造形物に近寄ろうとはしなかったという。
世界のクロサワなのにヘタレか!
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