okurejeの日記

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『〇月〇日、区長になる女』 感想

 

わが地元・石川県は、誰が投票するのか知らないが、森喜朗が政界引退するまでせっせと票を投じて当選させ、県知事には森喜朗が支援する馳浩を当選させるという、完全なる田舎の保守王国である。・・ヤレヤレと言うしかない。

ここにきてようやく自民党の化けの皮が剥がれ始めているが、それでもまだまだ、政権交代には程遠い。まだまだ、業界票や宗教票などの組織票は強いだろうし、もし今年、解散総選挙が行われても、かなりの議席は減らすだろうが、残念ながら、自民党が政権から転落することはないだろう。
ただ、2021年の衆院選では議席数は多少は減ったものの、絶対安定多数の議席は確保したが、石原伸晃、甘利明、平井卓也などの有力議員が落選したのは痛快だった。
その石原伸晃を見事に落選させたのが、東京8区。
本作、『〇月〇日、区長になる女』の舞台となる、杉並区だった。

 

 

2022年の杉並区長選で、3期12年も続投した現職区長を破り、わずか190票という僅差で初当選した岸本聡子氏の選挙活動と、彼女と共に選挙戦を駆け抜けた杉並区民の活動を追ったドキュメンタリー作品。

まぁまぁ、これほど緊迫感があり、かつ痛快なドキュメンタリー映画は初めてだった。
なにせ、杉並区長に初当選した岸本さんが区長候補に決定したのが2022年の4月10日で、初当選を果たしたのが6月20日。この間、わずか2か月ちょいである。
それまで海外在住でNGO活動を行っており、帰国したのが4月、それまで杉並区には縁もゆかりも無かった人が、12年間も区長を務めていた現職を見事に追いやったなんて、そんなことが現実に起こり得るのだろうか・・ それが現実に起こってしまったのだからスゴい。
さすが・・石原伸晃を容赦なく追い落としてしまった杉並区民というか・・

そんな劇的な首長交代劇をフィルムに収めて映像作品にしたペヤングマキ監督も、それまで区政には全く関心が無かったのに、区が十分な説明なく進めようとしている道路建設計画に自身のアパートも立退き対象になっていることがキッカケで、市民の有志によって結成された『住民思いの杉並区長をつくる会』に参加。
そしてなんと、参加した4月、岸本さんが初めて街頭で演説した日に、初対面した岸本さんと意気投合。PR用のYouTube配信を行うために岸本さんの選挙活動を動画撮影することになったが、それがまさか、こんな映画作品となって全国で公開されるとは・・ まさに奇跡が奇跡を呼んだような・・ こんなことがあるんだ・・

 

 

わずか2か月間の選挙期間中には様々なハプニングやドラマもあったが、運命の開票日。
まさかの初当選!

観ている我々観客も、本当に拍手喝采、物語もこれで大団円かと思ったが・・
これでエンドロールとはならず、初当選後、岸本区長が就任直後の議会において、自民党系のベテラン(糞ジジィ)区議から、嫌味たらたらの批判を浴びるシーンが続く。
まさに、「選挙は続くよ、どこまでも」で、当選がゴールではなくスタート、しかも、古臭い自民党系の区議が立ちはだかるだろう、困難な道のりも予想させる展開。
・・だが、作品はそれでもエンドロールとはならず、さらに北村区長就任から9か月後、岸本さんを応援していた区民を中心とした新人15人が区議会議員に初当選、同時に女性区議の比率が50%を超えるという、さらなる奇跡を最後に、やっと物語の幕が落ちた。

・・・いやぁ、米国にせっせと献金するため、公金チューチュー吸ってる自民党の政権がこれからも盤石なんだろうな・・と諦めかけてたけど、こんな地域もあるんだ。

経済学者の成田悠輔さんの著書『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』では、もはや選挙システムがアナログ過ぎて、政治はビッグデータをAIに解析させて任せるのが最適解であると書かれており、心底その通りだと思うんだけど、まだまだ選挙システムはなくならない。

であれば、このような杉並区の好例もあるんだから、これからは少しづつ投票率も上がって、自民党一党支配を脱することも夢ではないかもしれない。
そんな希望を持たせてくれる、いいドキュメンタリー作品だった。

 


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