堀貴秀監督の衝撃的なストップモーション・アニメ映画である『JUNK HEAD』。
その待望の続編である『JUNK WORLD』がついに公開の運びとなったので、早速鑑賞してきた。
1作目の『JUNK HEAD』、実は Amazon Prime Video でしか視聴したことはないが、良作なので3回くらいは観ている。
ただ本作、かなり緻密な作品設定が構築されており、ストーリーを本当に理解するには、それなりに設定を理解しなければいけない建付けになっている。
作品自体も、確かに映像を追っただけでは理解困難なシーンやキャラクターが多く登場する。
しかし、基本的には設定を理解していなくても、十分に楽しめる作品になっている。
奇抜な設定やストーリー、意表を突くようなクリーチャーや魅力的なキャラクターが、独特の世界観のなかで(ストップモーションによって)躍動する姿を見るだけで惹き込まれる映画であるといえる。
ではその続編で、『JUNK WORLD』の前日譚であるという『JUNK WORLD』はどうだったか?
正直に言うと、1作目ほどの衝撃は受けず、若干、冗長な作品であると感じられた。
確かに、1作目のヒットのお陰で製作費も増え、セットも豪華でキャラクター数や造形もかなり豪華かつ迫力があったが、作品だけを観た限りでは、このキャラクターや設定はなんだったの?・・・というか必要だったの?という疑問符が残ったまま、まぁ凄い映像だったね・・だけで終わってしまった。
先述したが1作目も同様、不明な設定やキャラクターも多かったが、映像とストーリー自体の魅力で、多少感じた疑問符も気にならなかった。しかし本作では、作品の魅力がその疑問符を無いことにはしてくれなかった。
また本作、どうしても1作目『JUNK HEAD』の続編である、という思いが強かったので、前日譚とは言え、『JUNK HEAD』では人間である「パートン」だったアンドロイド型ボディが、今回は別のキャラクターであるサイボーグの「ロビン」として登場するのも、少し取って付けたような気がした。
あと1作目でコミカルなキャラクターだった「マリガン」の職長とその太鼓持ちの二人が、本作では人間の別キャラクターとして登場するが、結局は前作の焼き直し的なキャラであり、彼らのサブストーリーも長めだったので、蛇足な感じがした。
『JUNK HEAD』のWikipediaを読めば、この作品の構成や世界観がある程度わかるようになっている。実は本作を鑑賞後に初めて、前作のWikipediaを読んで、特殊な設定やキャラクターの役割などが理解できた。
『JUNK HEAD』では、「ニコ」というマリガンの少女が登場しており、ミステリアスなキャラクターだったが、物語自体では特に大きな役割を持った存在としては描かれず、おそらく続編で活躍の幅が広がるんだろうな、と思っていたが、『JUNK WORLD』では、前日譚なので当然ながら、「ニコ」にまつわるようなキャラクターは登場しなかった。
彼女がどんなキャラクターだったかについては、Wikipediaを読んで初めて理解できたんだけど、できれば続編で、もう少し深掘りした説明が欲しかった。
ただ、前作でよくわからなかった「生命の木」だが、これもWikipediaを読んで初めて理解できたが、本作では「生命の木」の起源となると思われるキャラクターが、主要人物として登場していた。
でも、なぜ彼が「生命の木」になったのかの説明が映画上では明らかにされなかったので、なんとなくこれも、取って付けたストーリーのような印象を受けてしまった。
全体として壮大なストーリーではあったが、前日譚とはいえ、期待していた”『JUNK HEAD』の続編”という観点でいうと、あまり統一感がなかったのと、キャラクターの魅力も薄く感じてしまった。
比べるのもなんだけど、『スター・ウォーズ』シリーズのエピソード1~3(新3部作)は、大ヒットしたエピソード4~6(旧3部作)の前日譚だったが、どうせ取って付けたような制作意図ではあったろうが、シリーズとして統一感のある作品だった。
新3部作を観ると、これが旧3部作に繋がっていくんだな・・と大いに納得させられる作品だったが、申し訳ないが、『JUNK WORLD』を観ても、これがのちに『JUNK HEAD』に繋がっていくんだな・・といった感慨が湧かなかったのが残念。
あとは、あらかじめ Wikipedia で構成を把握していないと、作品を深く理解できないのも、なかなか難点。映画作品であるならば、本編を観るだけである程度のストーリー構成が掴めないといけないような気がする。
ということで、期待値が高かっただけに辛口な感想になってしまったけど、映像や世界観は相変わらず素晴らしいし、劇場で観るべき作品。
第3作目も必ず観に行くつもり。
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