CM監督のトビー(アダム・ドライバー)は、スペインでドン・キホーテをテーマにしたCMの撮影中だったが、製作に行き詰まりを感じていた。ある夜、雇い主やCMのスポンサーを交えた夕食会で偶然手にしたDVDは、自身が学生時代に卒業制作で撮った映画『ドン・キホーテを殺した男』であり、撮影現場は近くの村であったことを思い出す。
翌日、トビーは気まぐれにCM撮影を途中で放り出し、『ドン・キホーテを殺した男』の撮影現場に訪れる。そして、主役のドン・キホーテを演じた地元の靴職人であったハビエルに会いに行くが、なんと彼は当時の撮影終了後に精神を病んだのか、自分を本物のドン・キホーテだと思い込んだまま現在に至っていた。
もはや狂人同然のハビエルはトビーを自分の従者であるサンチョ・パンサと思い込み、嫌がるトビーを無理やり引き込んで、愛馬ロシナンテに跨り、再び冒険の旅に出発する。。
・・ここまでは非常に面白かった。
アダム・ドライバーはさすがの演技巧者で、ちょっと軽薄でアーティスト然としたトビーというキャラクターを見事に演じている。これからテリー・ギリアムらしい独特なクリーチャーが登場して、どんな幻想的でシニカルなストーリーが展開するんだろう、と少しワクワクしてドン・キホーテとサンチョ・パンサのロード・ムービーの幕開けを期待していたのだが・・
現実なのか白昼夢なのか境界線があいまいな物語は、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の『ホーリー・マウンテン』のようで魅惑的ではあるのだが、いかんせんドン・キホーテとトビーの冒険譚がつまらないというか・・
恥ずかしながら未読なんだけど、おそらくミゲル・デ・セルバンテスの1600年の原作小説『ドン・キホーテ』の物語をほぼそのままで脚本にしたんだろうか、肝心の2人の遍歴の旅のシーンが平板というか抑揚がないというか・・
そして展開が読めなさ過ぎて、・・普通、展開が読めない物語は次の展開が気になって作品にのめり込んでしまうものだけど、この作品に関しては、まぁ読めなくてもいいかとなってしまい、後半は眠気との戦い・・というか
久しぶりに映画鑑賞中に一時意識を失ってしまった。・・『FOUJITA』でも寝なかったのに・・
テリー・ギリアムが映画にかける狂気をドン・キホーテの狂気に落とし込んだ作品だとは思うんだけど、いかんせん本作のドン・キホーテの舞台は16世紀ではなく現代である。騎士に憧れたあげく、自分を騎士だと思い込んだ老人が狂気を貫くには、いくらスペインの片田舎とは言え、あまりにも無理があって、観ているコチラとしてもドン・キホーテの狂気を素直に笑えないし、受け入れることもできない。
まして、なぜ死んでしまったドン・キホーテの意思を受け継ぐかのように、トビーが新たにドン・キホーテになってしまったのかも、暗喩がきつ過ぎてサッパリわからない。
他人のレビューで、本作は観る人を選ぶ作品で、観客の2割しかこの作品を理解できない、みたいなのがあった。サッパリ理解できず、しかも寝ちまって悪かったなボケッ!