okurejeの日記

フィギュアや映画や本などについて、ゆるく書かせていただきます。

『バービー』 感想

 

初めてこの映画の予告編をみたときは、「何じゃコリャ!誰がこんなもん観に行くんじゃ!」とフツーに思ったけど。
まして日本じゃバービーなんてバタ臭い人形は根付かなかったし、そもそも日本だったらリカちゃんを、ちょっとクセのある満島ひかりとか二階堂ふみで実写化するとかそんな感じ?
・・しかしそんな映画、観たいか?と。

なので絶対に観に行くつもりは無かった。

 

当初は単に、人形世界のバービーが人間世界にやってきてヒト騒動を起こすという、ディズニーの『魔法にかけられて』的な、ゆる系のファンタジー作品だと思ってたので、一ミリも興味が湧かなかった。
しかしだんだんネット上では、日本での原爆ネタの炎上はともかく、本作でのフェミニズム的な要素についての話題が盛り上がってきた。
・・・これは、意外と問題作じゃないか?と思い直して、ひとつ鑑賞してみようか、ということになった。

 

で観始めてからしばらくは、バービーランドでのゆるゆるファンタジックなシーンが続いて、正直退屈だった。中盤、バービーがケンと人間世界に赴いて、人間界での自分自身のオーナー母娘や、製造元のマテル社の幹部連中なんかと出会ってバタバタするシーンも予測可能な展開で、やっぱ観に来たの失敗だったかな・・と思ったのだが・・

後半、ライアン・ゴズリング(42歳)演ずるケンが、人間世界では表面的にはともかく、根本的には男性優位な社会であることに気付いて、今まではバービーの付属品扱いで役立たずだった自分自身の男性性を自覚、バービーランドを男性優位社会に変貌させるという展開になってから、俄然、見応えある作品に感じてきた。
要するに後半、ケンが悪役になるという意外性が、この映画の肝になっていた。

今までバービーが住んでいた住居に「モジョ・ドージョー(道場)・カーサ(家)・ハウス」と名付けて自分が住み(センスあるネーミング・・)、バービーを追い出す。そしてケンの王国=「ケンダム」(kenのkingdom)を作り上げ、バービー達を、ケン達に服従するするよう洗脳する。
人間世界では持ち主の少女から、「バービー人形のせいでフェミニズムは50年は遅れた!」と、ファシスト呼ばわりされるわ、バービーランドに戻ったら戻ったで、ケンが世界の実権を握っている始末。・・打ちひしがれて、すっかりやる気をなくして鬱状態になったバービーが、それでも持ち主の人間母娘から励まされて自信を取り戻していく、というくだりは、ユーモラスながら見応えがあった。

 

この作品、フェミや、未だに無くならない男性優位社会の現実をチクリと描写する映画、というよりは、性別や国籍関係なく、全ての人間にかけられている呪いを解く、解毒がテーマなんじゃないかと感じた。
基本ゆるふわな演出ながら、なかなかに深いモノが含まれている作品で、どんな監督が撮ったのかと思ったら、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の監督で、『20センチュリー・ウーマン』では女性写真家のアビー役を演じたグレタ・ガーウィグ監督じゃないですか!
なるほど、単なる娯楽映画ではなく、テーマ性も持った作品を撮れる監督だよ。

 

予告だけ観るとめっさ面白くなさそうなんだけど。


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ということで、全く興味がなかった作品だったけど、炎上したおかげでスルーせずにすんだのがラッキーだった、なかなかの名作でした。
あと、アジア人のケンを演じた、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』主演のシム・リウもいい味だしてた!

 

 

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