世界のケン・ワタナベが出演する映画は(洋画/邦画問わず)なるべく避けて通ってきた。
が、ジョージ・ルーカスの手が離れたスター・ウォーズの映画化作品で唯一面白いと思った『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 』の監督が撮ったSF大作だというので、もしかしたら面白いかも・・と少しだけ期待して観に行ってしまった。
ロスで核爆発を起こしたのは進化したAIであるとして、アメリカを中心とした西側諸国は世界中のAI=ロボットを殲滅せんと、ついに「ノマド」と呼ばれる空中要塞を建造し、AIと共生しているアジア諸国で大規模な空爆を行っていた。
しかし、高度AIロボットの設計者であり、ノマドを無力化するほどの最終兵器を設計した「クリエイター」と呼ばれる人物が存在するとの情報を得たアメリカ軍部は、AIと共生者のグループに特殊部隊員ジョシュアをスパイとして潜伏させる。
ジョシュアは、AIに育てられたという、クリエイターの娘と思われるマヤに近づき、結婚して情報を得ようとするが、いつしかマヤを心から愛してしまう。
しかし、二人の子供も生まれようとしたある日、特殊部隊がノマドと共にジョシュアの潜伏場所を急襲、マヤはノマドの空爆で亡くなってしまった。
・・生きる気力をなくしたジョシュアだったが、特殊部隊から、死んだと思われるマヤを発見したので、案内役として協力するよう要請され、困惑しながらも部隊員とともに、マヤとクリエイターが発見されたという場所に潜入し、ついに、最終兵器とされるAIを発見する・・
ジョシュアを演じるのは、名優デンゼル・ワシントンの息子で、『TENET テネット』で主演したジョン・デヴィッド・ワシントン。マヤを演じるのは、マーベルの『エターナルズ』で主演したジェンマ・チャン。
そして世界のナベアツ・・じゃなかった、世界のケン・ワタナベと、俳優陣もメジャーどころである。
VFXもILM(インダストリアル・ライト&マジック)が手掛けているので、まぁまぁ金のかかった作品ということで、序盤は面白かった。
しかし、しだいに脚本の粗・・というか、なんか取って付けたというか、あまりロジカルじゃないストーリーが展開されていく。
そもそも、最終兵器と言われる少女AIのビジュアルが、「坊主頭の僧形の子供」という、なんか既視感のあるスタイル。
・・確かに可愛いけど、陳腐といえば陳腐だ。
なおAI少女は、さすがに最終兵器と言われるだけあって、機械はおろか人間まで無力化できるのだが、その際のポーズが、「おててのしわとしわを合わせてしあわせ 南ー無ー」・・なんと合掌!
お前は「お仏壇のはせがわ」か!一休さんか!
敵地とされるアジアの都市に、なぜかアメリカ人の人間がスパイとなって何人も溶け込んでいたり(AIが人間のスパイになんで気が付かないんだ?)、世界のケン・ワタナベ率いるAIロボット軍団が、最初は最新鋭の戦闘機で人類側に攻めてきたと思ったら、別のシーンでは木製の小さな船をえっちらこっちら漕ぎながら、米軍の巨大装甲車と闘ってボコボコにされたりと・・・
キャラクターやら設定が物語上で整合されてないので、中盤から観ていてシラケてしまう。
なぜかラスト・サムライみたいな衣装を着た世界のケン・ワタナベ、たまに日本語も話すのだが、そのセリフがなんかわざとらしくて、せっかくの母国語でのシーンもシラケて観えてしまう。
また一番萎えるのは、世界のケン・ワタナベが、潜入して少女AIを連れ出したジョシュアを捕えて処刑しようとするが、ちょっと目を離した隙にまんまと逃げられてしまうのだが、この手のシーンでいつも思うのは、どうせ殺すつもりなら最初に捕まえた際にさっさと撃ち殺せばいいのに、なぜか気絶させて牢屋にぶち込むという・・
インティ・ジョーンズみたいな80年代の娯楽作ならいざ知らず、現代の作品でこんな安易な流れはありえないだろう・・
樋口真嗣監督が本作を、「とにかく今どき珍しいオリジナルSF作品なので、みんな劇場へ行け!」と絶賛されていたが、この脚本でそれを言われてもさすがに厳しい。
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 』は確かに魅力的な作品だったが、なんだかんだ言ってもベースは手堅い名作『スター・ウォーズ』なので、作品のクオリティも『スター・ウォーズ』に乗っかっているため嵩上げされているともいえる。
(・・それでも駄作だった『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』や続3部作などは、どんだけダメダメなんだよ・・って話だけど)
ギャレス・エドワーズ監督には、まだまだオリジナルSF作品を手掛けるには力量不足では?と感じた。
ということで、色んな意味で残念な作品。南無~