まぁとにかく大変なことになっていて、映画館での上映回数が半端ないが、他の上映作品を押しのけた甲斐があってか、観客動員もグングン伸びているという。
それというのも、2020年に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、なんと日本歴代興行収入第1位だったそうだ。・・となれば、そりゃこの作品に日本のエンタメ業界が総力を挙げてプロモーションに取り組むのもしょうがないというもの。
昨日、「鬼滅の刃」のおかげで、公開2日目だというのにIMAX上映が1日に2回しかなかった『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』を観終わってシアターの外に出たら、その後に上映予定だった「鬼滅の刃」が2本とも満員御礼で、大勢の観客がロビーに列をなしていてビックリしてしまった。
いくらサタデーナイトとはいえ、夜の9時から「鬼滅の刃」を鑑賞するのに、こんなに人が押し寄せるとは・・
そんな型破りの劇場版・鬼滅の刃だが、正直、観る前から不安はあった。
テレビ放送版の『竈門炭治郎 立志編』から劇場版1作目『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』、次いでテレビ放送版『遊郭編』までは、ほぼ文句のつけようがないアニメ作品だったが、テレビ放送版の『刀鍛冶の里編』から、余計なアニオリ(アニメオリジナルストーリー)が鼻につき始める。
特に時透無一郎のエピソードが長すぎて、ちょっと辟易してしまった。
それ以前のシリーズでもアニオリは多少は存在し、那田蜘蛛山エピソードでは顕著ではあったが、原作者の吾峠呼世晴先生も絶賛するくらいの高クオリティだったので、むしろ効果的だった。
‥しかし、『刀鍛冶の里編』以降のアニオリは、まさに「蛇足」以外の何物でもなかった。
ハッキリ言って、『柱稽古編』なんて8話も放送するエピソードではないにも関わらず、ここでも時透クンの無駄なエピソードなどを無理にぶっこんできて、無理くりワンクールに仕立てたのは、さすがに力技が過ぎると思ったけど、しかし。
柱稽古編から無限城編の中盤までを第1部、無限城編の中盤から終盤までを第2部、そして鬼舞辻無惨との最終決戦を第3部としたほうが、流れとしたら収まりがいいのだが、『柱稽古編』のクライマックス、産屋敷耀哉と鬼舞辻無惨の邂逅と、産屋敷一家の壮絶な爆死シーンを描くためには、やはり30分は必要。
・・となると、「柱稽古編から無限城編の中盤までを第1部」という案は却下となるのは当然だろう。
なので今回の劇場版3部作、第1部は無限城編の中盤まで、第2部は無限城編の中盤から終盤まで、第3部はいよいよ、外道・鬼舞辻無惨とのラストバトルで大団円、とならざるを得ないのだが・・
本作、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、155分、2時間35分。
この長尺で無限城編の中盤までしか描かないとなると、やはり無理な引き伸ばしはどうしても必要になるだろう。
余計なアニオリは極力排されてはいたが案の定、各エピソードの描き方はどうしても冗長だった。
正直なところ、テンポのいい原作でも、鬼側の人間時代のエピソード、特に上弦の鬼の過去エピソードは、読んでてちょっと長ぇな・・と思うこともしばしば。
とくに猗窩座の人間時代のエピソードは厨房臭さもあって、何度か再読していても、その度に読むのが少し面倒と感じていたが・・
案の定、劇場版でのこのシーン、もう「泣いてくだせぇ!」「泣いてくだせぇ!」という製作者側の圧が強烈で、テレビドラマ1本ぐらいの尺で高圧的に畳みかけてくるものだから、観る側も冷静にならざるを得ない。というか、感動ポルノにもほどがある。前の席で鑑賞してた小学生くらいの女の子が、後ろから見てもわかるくらい、このシーンではダレていた。
アニメ作品とは思えない圧倒的なクオリティで無限城を描いているのは確かに賞賛に値するんだけど、同時に、「末永く儲けさせてくだせぇ・・!」「ここ一発で稼がせてくだせぇ・・!」という製作者側からの血鬼術を、「全集中の呼吸」(かなりの死語)でなんとか撥ね退けたい、とせめぎ合う作品ではあった。
・・ダラダラ書いてしまったが、要するに本作、長過ぎ!