
初公開が2001年なので、実に25年ぶりの劇場鑑賞。
新宿武蔵野館、エレベーターまで『殺し屋1』一色に!

三池崇史監督といえば、1999年作品『DEAD OR ALIVE 犯罪者』がとにかく強烈だった。
魂を鷲掴みにされて、当時は三池作品ばかり観ていた。
その最盛期の、監督の脂の乗りきった作品が、本作『殺し屋1』ではないだろうか。

三池作品の特徴としては、ヴァイオレンスなのに、どこか飄々としてユーモラスな演出。
日本語と広東語と英語をごたまぜで話すアジア人キャラクター。
無国籍というよりごった煮のような、超ヴァイオレンスなのにコメディのような、捉えどころのない作風が、とにかく当時はクールで魅力的だった。
ただ、2005年以降の作品はとにかく粗製濫造ぶりが目立つようになり、ユニークな演出も時代遅れに感じ、2010年以降の作品はほぼ観ていない。というか、観る気がしない。
今となっては嫌いな監督の一人となってしまったが、それでも当時の作品の一部は、今でも面白いと思う。そのベストスリーを上げれば、本作『殺し屋1』と、同じ佐藤佐吉脚本の『極道恐怖大劇場 牛頭 GOZU』、そしてやっぱり、『DEAD OR ALIVE 犯罪者』。
次点で『FULL METAL 極道』と『極道戦国志 不動』かな。

ということで四半世紀ぶりに劇場で鑑賞したが、今観ると若干、後半の進行がダレてる気もしたが、とにかくキャストが素晴らしいため、面白く観ることができた。
それにしてもみんな、若い。浅野忠信も大森南朋も若い。
そういえば、最近は殿(北野武)の映画で、殿の腰巾着みたいになっている浅野&大森コンビだが、この当時から共演してるんだな・・
何と言っても浅野忠信の、演技してない素のような演技が素晴らしい。原作の垣原とは似ても似つかないビジュアルだったけど、得体の知れない怖さや凄みが全身から溢れていて、絵的には完全に極道中の極道である高山役の菅田俊に、怖さでは引けを取っていないのがスゴイ。
なお鑑賞後、これも久しぶりに原作を読み直してみた。
そもそもストーリー概略。
実写映画版では塚本晋也監督が演じた「ジジイ」(こちらも原作とはビジュアルが異なる)が、イチや、はぐれもののヤクザとチームを組んで、新宿歌舞伎町にある通称「ヤクザマンション」と呼ばれる、暴力団関係者の入居が8割を占めるマンションから暴力団を追い出す計画を立て、実行する。
特にマンション内で武闘派で知られる「安生組」の組員を次々と殺害し、他の組とも抗争を起こさせるよう仕向け、遂にはマンションからヤクザを駆逐するまでを描いてる。
ただ、ジジイがなぜヤクザマンションからヤクザを追いだそうとしたのかは、原作を読んでも今一つ理由はわからない。なんとなく、自分の身近でヤクザが起こすトラブルを見るのが大の楽しみで、自分が死んだ後もそんな楽しいことが起こるのは我慢ができないため、イチのような凄腕の殺し屋を洗脳で育てて、ヤクザ皆殺しを立案・実行しているらしいのだが、なんとなく後付けの理由のような気がする。
また、浅野忠信が演じた安生組の若頭、垣原は、サディストでもあるが、究極のマゾヒストでもあり、組長や組員を次々と惨殺するイチが現れるのを、なぜか期待している。
残虐性がハンパないイチに狙われたら、まず間違いなく命がないハズなのに、なぜイチとの邂逅を楽しみにしているのか・・
原作のラストで、実は垣原は痛みを快楽に変えることができるため、究極のサディストであるイチの襲撃が、自分に最大の快楽を与えてくれることを期待していた、という理屈らしいのだが、これもイマイチ、取って付けた理由のような気がする。

作品的に、それぞれのキャラクターの目的を探るよりも、過剰なヴァイオレンス要素を楽しむ作品である気もするが、実は実写映画版の脚本の制作時は、まだ原作が未完だったため、実写版のラストはオリジナル脚本になってしまった。
そのため、よけいにキャラクターの行動原理がわからなくなっている。
それでも、ラストまでのストーリーはほぼ原作通りで、原作にはない独特なビジュアル感やコメディ要素もいい感じで作用して、コミック実写化作品としてはかなり秀逸な映画作品になり得たと思われる。
また本作の過剰なゴア表現もよく話題にはなるが、原作の猟奇描写、特に松尾スズキが一人二役で演じた二郎・三郎兄弟の、女性に対する拷問シーンでの人体損壊描写などは痛すぎて、実写でそのまま表現されたらそうとうキツい映像になってしまう。
しかし本作の残虐描写はCGを駆使して、どちらかというとギャグっぽいテイストで、マイルドな描写になっているので、それほどグロさは感じない。その匙加減の絶妙さも、本作の魅力の一つかもしれない。
・・というか、当時のCG技術の未熟さもあるのか、グロシーンのCGにリアリティが薄いのも、マイルドに感じてしまう理由なのかもしれないけど・・
ハッキリ言って、ストーリーの深さもヴァイオレンスさもゴア表現も、原作のほうが優れており、実写版は原作の表面をなぞっただけの作品とも言えるんだけど、当時の三池作品独特の演出とイケイケ感が満載で、邦画史としては後世に残る作品の一つかと思われる。
かと言って三池の新作なんてこれからも絶対観ないけど!

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