okurejeの日記

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戦後75年アンコール上映『野火』 感想

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塚本晋也監督『野火』が、立川シネマシティにて2日間、アンコール上映された。
5年前の戦後70年という節目の年に初公開されてから、早くも5年の歳月が過ぎたことになる。
初めて本作を観たのは地元の金沢シネモンドで、当日は塚本監督の舞台挨拶にも立ち会えたが、5年振りの劇場鑑賞となる今回も塚本監督の舞台挨拶があり、ラッキーな1日となった。

 

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自身もフィリピンのミロンド島で遊兵となった後に米兵の捕虜となり、レイテ島の俘虜病院に収容された経験を持つ大岡昇平が、収容所で見聞したレイテ島での兵士たちの凄まじい状況を元に小説化した『野火』を、塚本晋也監督が自身の主演で映画化した作品。

 

太平洋戦争末期、激戦地レイテ島にて、肺病を患って所属部隊や野戦病院からも追い払われて、「遊兵」(= 所属する軍隊から離脱した兵隊)となった主人公の田村が、死を覚悟し諦念を抱きながら島内をさまよい、極限の飢餓状態の中で「人肉食」への欲求に取り付かれ葛藤するまでを描く。

 

5年前に本作を初めて観るまで未読だったのだが、鑑賞後に初めて原作も読んでみた。
原作では田村のモノローグで物語が語られるので、場面場面での田村の心情が当然ながらよくわかるのだが、映画版ではモノローグは一切挿入されない。
なので例えば、野戦病院が米軍機に爆撃されて日本兵が次々と撃ち殺されるシーンで、なぜか田村が笑いだすのだが、原作ではなぜ田村がこのような場面で笑い出したのか、モノローグで心情が綴られるが、映画では説明がない。なので本作、原作未読だとわかりづらい箇所は多々ある。
しかしながら、監督の見事な演出力と役者さんの圧倒的な演技力のおかげで、原作を知らなくてもこの作品が訴えたいことは十分に伝わってくる。
特にビジュアルの力は大きくて、まさに「ボロ切れ」のように薄汚く衰弱した日本兵達、米軍の攻撃でグロテスクに損壊される兵士の肉体、まさに「死屍累々」とはこのことであると思えるような悲惨な死体の数々。
文章だけでは伝わらない戦争のむごたらしさがダイレクトに伝わってくる。
人間が機関銃で撃たれたらこんな挽き肉みたいになって、飢餓の極限状態に置かれたら人肉食も辞さなくなっちゃうんだよ、というメッセージをここまでリアルに映像化した作品は日本映画にはないんじゃないだろうか。

今回の上映では初めて観る方も結構いて、若い人などは衝撃を受けたと感想を語っていた。なので、本作を毎年の終戦記念日に上映する意義は大いにあると思う。

 

『サピエンス全史』で有名なユヴァル・ノア・ハラリ『ホモ・デウス』には、21世紀では戦争で死ぬ人より自殺や過食で死ぬ人の方が圧倒的に多く、人類はコスト過多な戦争という脅威を抑え込みつつある。と述べていて、確かにその通りだと思うけど、例えばテレビに習近平が映ったら、「このクソボケが!ウンコ食ってはよ死ねや!」と簡単になってしまうので、そう簡単に人間のなかから戦争を起こす要素は無くせないだろう。
塚本監督も、戦争を知らない世代が殆どとなった今の日本が、なぜかまた戦争に突き進んでいるのではないか、と危惧されている。

 

舞台挨拶で塚本監督が、以前に故・大林宣彦に「戦時中生まれの自分は戦後の映画監督だけど、塚本監督は「戦前」の映画監督だね」、と言われたというエピソードが、印象に残った。

 

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・・それにしても、改めて観ても、「安田」を演じたリリー・フランキーさんの怪演はスゴかった。
原作と違ってすぐに泣きべそをかく、森優作さん演じる「永松」といい、安田と永松のコンビは、小説以上に安田と永松だったなー。

 

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