今年の4月に『ツィゴイネルワイゼン』の4Kデジタル完全修復版を渋谷のユーロスペースで上映していたが、これから他の2作品の公開もあるのかな・・と思っていたら、ちゃっかり『SEIJUN RETURNS in 4K』ということで、11月11日から3作同時上映が始まっていた。気付くのが遅れてしまった。
しかも、11月11日の『ツィゴイネルワイゼン』初日上映時には、大楠道代さんのトークショーがあったそうだ・・
・・これは行きたかった!
4月の上映はプレミア先行限定公開だったらしい!
大楠道代さんのトークショーが観れるんだったら、慌てて4月に観に行くんじゃなかった!
・・ということで気を取り直して、『陽炎座』。
いわゆる「浪漫三部作」の中では、やはり『陽炎座』が一番好きで、古くはレンタルビデオからDVDまで、何度か鑑賞しているが、『ツィゴイネルワイゼン』や『夢二』と同様、劇場での鑑賞は初め。
本作は何と言っても、松田優作がいい。
70年代までは『太陽にほえろ!』のジーパン刑事や『蘇る金狼』など、荒々しい役柄が多かったが、『野獣死すべし』ではワイルド感を排除し、なんと奥歯を4本抜くという驚異の役作りを行って、まさに幽鬼のような主人公を演じたのが衝撃的で、この人ってこんなことする人なんだ!と驚いたもの。
それが本作『陽炎座』に至っては、訳のわからない幻想的な映画に出演し、ワイルドとは程遠いインテリゲンチャ役を飄々と演じるという・・
そして2年後にはあの『家族ゲーム』に主演するという・・
本当に当時、松田優作に首ったけだったと記憶している。
しかしそもそも、凄い演技派の俳優だったので、こんな訳の分からない作品でも望んで、そして嬉々として演じているのかと思っていたけど、大楠道代さんのインタビューによると、やはり本人は凄く悩んでいて、同じく鈴木清順監督の訳の分からない演出に悩んでいた中村嘉葎雄さんと共に、夜中にホテルの部屋でドンドン!と大きな音を立てて暴れていたそうだ。やっぱり・・・
今年の4月に『ツィゴイネルワイゼン』を観たときは、前夜の二日酔いが祟って、何度も意識を失いかけたが、体調万全で臨んだ『陽炎座』でも、やっぱり何度か眠気が襲ってきた。
音楽が少ないのと幻想的なシーンが多すぎて、鑑賞中、ものすっごい大鼾をかいてる人がいたけど、迷惑というより「・・わかる。。」と思ってしまった。
しかし、本当に絵に迫力のある映画で、そして松田優作の存在感が凄すぎて、いつまでも記憶に残ってしまう作品なのには間違いない。
当日は終演後にトークショーがあり、出演されたのは、幾原邦彦監督と藤津亮太氏というアニメ界の方だそうで、失礼ながらお二人とも存じ上げなかったが、アニメ界でも『陽炎座』や「浪漫三部作」に影響を受けた作品が多いそうで、興味深いお話を伺えた。
泉鏡花の作品がちょっと読みづらく、過去にちょっとしか読んだことが無いけど、ここはひとつ原作となった数作品を読んでみようかと。
ただ最近は、ネットで「泉鏡花」と検索したら、だいたい『文豪ストレイドッグス』が出てきてぶったまげる。